1.はじめに
福島県内にも多くの湧水が存在します。その中には歴史的な由来を持つ湧水も存在します。幻想的な由来から史実に基づくものまで多岐にわたりますが、今回は福島県内に多くの伝説を残す八幡太郎として知られる源義家にゆかりのある「小滝の清水」を白河市に訪ねました。
(写真-1、写真-2)。
1.はじめに
福島県内にも多くの湧水が存在します。その中には歴史的な由来を持つ湧水も存在します。幻想的な由来から史実に基づくものまで多岐にわたりますが、今回は福島県内に多くの伝説を残す八幡太郎として知られる源義家にゆかりのある「小滝の清水」を白河市に訪ねました。
(写真-1、写真-2)。
2.位置について
本湧水は福島県白河市東深仁井田字千代ノ岡地内、阿武隈川沿いに広がる水田として利用される低地と南側の丘陵地との境界部に形成された微高地に位置しています。 順路は白河市街地から県道11号(通称御斎所街道)を東に進みます。白河ラーメンの某有名店入口の看板を過ぎ約7.0km、深仁井田西口のバス停を過ぎたら消防屯所の手間を左折、次の十字路を右折すると「小滝の清水」に到着です。
3.湧水の水質について
湧水を採水して実施したイオン分析結果を基に作成したトリリニアダイヤグラムとヘキサダイヤグラムを示します(図-2、図-3)。
トリリニアダイヤグラムでは重炭酸カルシウム型に分類されましたが、中間型との境界部付近となりました。ヘキサダイヤグラムと併せ、やや塩化物イオンの割合が多い印象を受けます。
4.地質と湧出機構
湧水周辺部の地質分布図を示します(図-4)。湧水は低位段丘に位置しますが、南側は断層運動の影響で砂岩等が変成した圧砕岩の分布域となります。本箇所は日本の構造線(大規模な断層の集合部)で有名な棚倉構造線※の西縁部であり、地下深くまで圧砕岩が連続していると考えられています。
湧水は低位段丘内を流れる表層付近の地下水が湧出していますが、地下深部の地下水が圧砕岩中の亀裂を通り地表付近まで上昇して、一部混入するため、塩化物イオンがやや多いのではと予想しました。
※棚倉構造線:断層運動により著しく破砕された岩石が分布する。福島県白河郡棚倉町付近を通り北北西-南南東方向に幅2〜3km、延長60km程度連続し、日本の基盤部を「東北日本」と「西南日本」に区分する境界部とされる。
5.「八幡太郎」の湧水に思いを馳せる
案内坂によれば、平安時代末期の前九年の役当時、朝廷に従わない地方豪族の安倍氏討伐のため出兵した八幡太郎こと源義家がこの地に陣営を張り、湧き出す湧水を愛用したと伝えられているとのことでした(この案内板は板に墨で書きつけあります。字体が美しく個人的に感銘を受けました)。
また、源頼義・義家親子が二本松の木幡山に敗走し神仏に祈願したところ、雪が降り木々に積もった雪を源氏の白旗と誤認して、追手が撤退したという伝承が、「木幡の幡祭り」の由来となっています。
約950年前から現在まで、絶え間なく湧き出す湧水を見ながら、平安時代に活躍し福島県内に多くの逸話を残す武人の姿に思いを馳せる、そんな気持ちにさせる不思議な空気が「小滝の清水」にはありました。
歴史好きの方は是非、足を運んでみてください。東国の武士の息遣いが聞こえるかもしれません。