花塚山(標高918.5m)は川俣町と飯舘村の境界を成す山地で、阿武隈高地北部に位置しています。阿武隈高地は、地下深所で貫入・冷却した花崗岩類で構成されており、長年の隆起・浸食作用で老齢期のなだらかな山容となりました。その後、再び隆起が進み隆起準平原になったと考えられています。奇岩となった巨石は、風化しない部分が岩塊(コアストーン)として残ったものです。岩塊は浸食の状況により様々な形を作り、「石仏や神」にたとえられ、干ばつ時には雨乞いも行われた信仰の山でした。山名は、放鹿山(はなしか山)から花塚山になったと伝えられており、登山口に放鹿神社(ほうろく神社)が祭られています。
そして花塚山にはもう一つ大きな特徴があります。2017年1月に富士山が見える北限の山として認定されました。福島民報2010年1月6日発行の記事で「富士山が見える北限とされる麓山や日山より遠い花塚山からも遠望が可能とみられることが専門家らの分析で分かった。花塚山―富士山の距離は308㎞。関係者は写真により詳細なデータを残したいと考えており、撮影への挑戦を呼び掛けている。」と掲載をしました。この撮影挑戦呼びかけに対し、大槻氏,菅野氏,斎藤氏の3名は、粘り強く「富士山遠望撮影」に挑戦し続け、2016年11月26日、撮影に無事成功そして富士山であることが日本地図センターの田代博氏により検証されました。撮影に成功した場所の岩は、現在「富士見岩」と命名され実際の写真とともに3名の撮影者の顔写真が掲示されています。福島の山岳史にとって重要な記念日となった日、私はカメラを忘れのんきな気分で蓬田岳を登っていました。
今年は6月26日に九州北部,中国,四国,近畿地方が梅雨入りとなるなど(平年6月5日~7日ごろ)、西日本の梅雨入りが異常に遅れる中、福島では梅雨入りして以来(令和元年の梅雨入りは、6月7日ごろ)、休日になると雨の日が続いています。弊社発行「土と水」の原稿締め切りまで、梅雨の晴れ間の山行は期待できないことから、自然が作った奇岩の造形を観察する花塚山の山行を楽しむことにしました。今回は、花塚の里から堅石を経由して山頂に至るコースを紹介します。