(1) 地盤材料・地盤の地盤工学的問題
地盤材料には、工学的分類方法2)があり、岩石質材料、石分混じり土質材料、土質材料および土に分けられます。また、土質材料は、粗粒土(礫・砂などで礫質土・砂質土ともいう場合があります)、細粒土(粘土・シルトなどで粘性土ともいう場合があります)、高有機質土(黒泥、泥炭など)および人工材料(汚泥、改良土など)に分けられます。
これらの地盤材料にはいくつかの問題があります。つまり、礫・砂などの粗粒土は、土粒子の粒径が粗い(大きい)ため、透水性が良く、締め固めやすいことから強度が大きく、変形しにくいのですが、粒子のそろった砂は、地下水位以下に分布する場合には地震時液状化を発生することが多く、問題となります。シルト・粘土などの細粒土は、粒子が細かい(小さい)ため、透水性が悪く、締め固まりにくいので強度が小さく、変形しやすいなどのことから材料としても地盤としても問題が多くなります。
ここで、土を土質材料の砂・礫の粗粒土とシルト・粘土の細粒土のみを考えると、土は主に土粒子・水・空気から構成されています。このため、
- 変形しやすい(応力・ひずみ関係が直線的ではない)
- 土の挙動は、荷重(応力)、時間と拘束条件に依存する
- 土は、場所や土粒子の種類(大小やその混ざり方)、水・空気の混合率によって性質が変わるという特徴を持っています。
また、表面の土を見ることはできますが、地中の土を見ることは出来ないため、地中から取り出した少量の土試料で地盤全体を判断せざるを得ないことになります。地中から取り出すサンプリングの方法によっても乱されやすく、地中と同じ条件を再現することも非常に難しく、高額となるため、原位置における土の挙動を忠実に把握することが難しいという問題もあります。
このような問題があることから、
- 建造物の基礎とする場合、
建造物の荷重を支えられるか?
沈下しないか?
支えるためにはどれくらいの耐力が必要か?
などの問題もクリアしなくてはならなくなります。
車両(車や鉄道など)が通行する場合にも同様であり、この場合には
などの問題も付加されます。
敷地を広げるために盛土や切土をした場合や地下に構造物を築造する場合にも
などの問題があります。
つぎに、土を建設材料として用いて、道路や堰堤や堤防や造成盛土などを造る場合にも
- 用いる土の種類は?
- 締め固めるための道具は?
- 締め固めるためのエネルギーは?
- そのときの含水比は?
などの問題をクリアしなくてはなりません。
さらに、豪雨時の雨量(表流水による洗掘、斜面の崩壊、河川の増水・氾濫などが引き起こされる)、台風時等の風速・風力、地震動などが作用した場合に
などの問題もクリアしなくてはなりません。
これらの問題に応えるための基礎となるものが土質力学であり、地盤工学です。
(2) 地盤材料の変形・強度特性の工学的特性
地盤材料の強度定数つまり地盤材料の変形・強度特性(粘着力c、内部摩擦角φ、変形係数Eなど)を求める場合には、せん断試験を行うことが一般的です。これは、表-13)に示すようにせん断試験法(せん断試験の方法・供試体寸法・せん断荷重・圧密時せん断時の応力状態など)、各種条件(含水の状態・排水条件・密度の大小・圧密の状態・構造の状態など)および地盤材料の種類によって強度・変形特性が異なるためです。つまり、強度定数が地盤材料の状態、地盤材料の種類およびせん断試験の方法等によって固有の値とはならないことが分かってきたために、その現場の状態・状況や構造物の荷重などを考慮した個々の設計に用いる強度定数が必要となるためです。
また、図-1に示すような箇所にある地盤材料の要素(A、B、C)は、せん断される方向が異なるため、得られる変形・強度特性も異なり、潜在すべり面に沿ってピーク強度が同時に発揮されるという保証もありません4)。
また、地盤材料は、表-1に示した状態の他にダイレイタンシー、インターロッキング、粒子形状、クリープ、セメンテーション、エイジングなどの地盤材料固有の性質も考慮する必要があります。
さらに、地盤材料は、有効応力の原理に支配されていることも事実ではありますが、実務的には地盤材料の材料力学的解釈による土の破壊基準として、二次元応力状態のモールの応力円、クーロンの破壊基準、モール・クーロンの破壊基準などを用いています。今後は、各種解析手法の三次元化に伴い、三次元応力状態での破壊基準も考慮する必要が生じてきています。
地盤工学の実務としては、地盤構造物の設計法、施工技術、種々の計測および保守(維持・補修)があります。