今年は、クマによる被害が全国的に相次ぎ、県内でもツキノワグマによる被害が14件と過去最大となった。これまで「阿武隈川の東にはクマはいない」と言われてきたが、阿武隈高地そして浜通りでもクマの目撃情報が寄せられている。「クマの生息域は確実に拡大、県内には5〜6千頭のクマが生息し増加傾向にある。強い個体は山の奥深くでどんぐりなど木の実のほかシカなどの動物を食べるが、メスや子供など小さな個体はその縄張りから追い出され、人が暮らす集落へ生息域が拡大している。里山周辺には耕作放棄地も多く、隠れる場所があることが拡大の一因となっている」と専門家は指摘している。
山登りを趣味とする私もクマが生息している山域に入る場合は、クマとの遭遇を避けるため、クマ鈴や携帯ラジオを身に着けて行動している。それでもクマと遭遇することがある。磐梯山では木々が芽吹く春、沼の平の残雪をゆったり歩くクマと遭遇した。
比較的距離が離れていたこともあり、木陰でクマが立ち去るまで観察した。夏、安達太良山沼尻登山口へ向かう林道で早朝ものすごいスピードで走るクマそしてラビスパから雄国山へ至る登山道脇の笹薮の中でジダケに囲まれ唸っているクマにも遭遇した。いずれもクマの生息域で距離を保っていたため、恐怖は感じなかった。数多いクマとの遭遇で最も恐怖を感じたのは、2017年6月18日に南会津の斎藤山で子連れのクマと至近距離で遭遇したときだ。この日は、梅雨入り前なのに蒸し暑かった。斎藤山は、「森歩きと展望の山」と称され、秋には全国の「さいとうさん」が集まる山として、名前が知られている。陽ざしを遮る森林浴がお気に入りで、幾度となくこの時期に訪れていた。いつものように林の中を歩いていると、ものすごい獣臭がして、右笹薮からバギッと大きな音がした。間髪入れずに、大小の黒い塊が飛び出してきた。「熊だ、それも子連れ」その距離二十メートル、すくむ相棒とじっと動かずにいると、親熊が笹薮に戻っていった。「良かった」でも子熊が近づいて来る。「げっ」と思った瞬間、再び親熊が現れ仁王立ちとなり「グォアー」と、地面を揺るがす勢いで吼えた。どうすることもできず、二人でストックを槍に見立て「ウォーウォー」と、立ち向った。すると、親子熊は笹薮の中に戻っていった。へなへなと地面に座り込んだ相棒が「どうする」と弱弱しく聞いてきた。「もうすぐ山頂だから」と俺、後は『森の熊さん』を二人で喉が張り裂けんばかりの大声で輪唱し、前に進んだ。
クマに遭遇したこの日以来、斎藤山には登れていない。
この時は、至近距離での遭遇だったため、大声を出すなどクマを興奮させる行動をとってしまった。こうしたことが二度と無いよう、鈴やラジオの携帯は当然とし、今後遭遇した場合は「声は出さない、身体を低くし、静かに立ち去る」、そしてクマが向かってきたら身を守ることを徹底したい。これから阿武隈高地や浜通りの山は積雪が少なく、冬枯れ特有の水墨画の様な素晴らしい風景となる。
会津と比べると暖かい阿武隈高地や浜通りの山でクマが冬眠するのか、誰もわからない。これからもクマとの遭遇を避ける方法をしっかり行って山登りを楽しみたい。
今回は、初冬いわきの水石山への山行を紹介します。
(※写真は岩手県紫波町で社員が撮影、文の一部は第35回私の山紀行から一部抜粋)
【★水石山(標高735m)12月3日(日)晴】
水石山は、いわき市民にとって身近な山であり山頂は芝生状の草に覆われ平坦で広い公園となっている。同じように周辺の阿武隈高地には、海抜400〜800mの間に平坦な山頂が分布している。地質は古期花崗岩類が主で、中生代後期に準平原化作用が進み平坦となった。山頂の平坦面を利用して日本で最初のゴルフ場が作られた後に、馬の遊牧場として利用されたと言われている。緩やかな東斜面から望む太平洋の展望が大きな魅力だ。今回は、クマの出没情報もあるいわきの山の情報収集と『初冬の澄んだ大海原の眺望』を楽しみに小玉ダムキャンプ場から山頂を目指す。
昨日はいわき市田人町の明神山に登った。単独行の若い男性が、クマよけスプレーを装備していたのには驚いた。「浜の山でも用心をしないとね」そんな会話をしながら、登山口となる小玉ダムキャンプ場に午前9時40分に着く。珍しく駐車場は満車状態、通行止めとなっている林道の路肩に駐車。準備を進め9時58分にスタートし、駐車場から南に延びる登山道に入る。水石山はお椀を伏せたような山容で、緩斜面のほぼ縁となる『剣ヶ峰』までは、キツイ急登となる。周囲はミズナラを中心とした雑木林で、斜面には滑り止めのロープが張られている。数年前の梅雨時期この斜面で転倒し左膝を強打した。まだ痛みが残っているため慎重に歩を進める。道は一旦緩むが、すぐに大小の石がゴロゴロ点在する急斜面となる。辛抱の時間はまだまだ続くが、暖かな日が続いたこともあり色づく木々が残り心を癒してくれる。『小玉ダム』と書かれた小さな矢印板を過ぎると、登り始めて53分(午前10時51分)に剣が峰と書かれたピークに着く。ここのピークは木々に囲まれ、四等三角点が設置してあるだけで展望はない。
クッキーを口に放り込み、先を急ぐ。ピークから尾根沿いに進むと、道はほぼ直角に西側へ曲がる、小さな沢を渡渉し緩やかな斜面を進む。日当たりがよい斜面はアセビが目立つ雑木林で、南側斜面は一部ヒノキが植林されている。その区画境には、牧場の名残として有刺鉄線 の柵が朽ちて残っていた。斜面は徐々に平坦となり、遠くに国交省東京航空局のアンテナが見えると山頂は近い。施設フェンス脇を通り、ススキが一面に茂る大草原に出る。いつ見ても白い展望台が真っ青な空に映える水石山の象徴的な風景だ。
三角点付近からは大海原が望め、遅れてくる相棒を眺望の展望台で待つ。クッキーを口に放り込み、先を急ぐ。ピークから尾根沿いに進むと、道はほぼ直角に西側へ曲がる、小さな沢を渡渉し緩やかな斜面を進む。日当たりがよい斜面はアセビが目立つ雑木林で、南側斜面は一部ヒノキが植林されている。その区画境には、牧場の名残として有刺鉄線 の柵が朽ちて残っていた。斜面は徐々に平坦となり、遠くに国交省東京航空局のアンテナが見えると山頂は近い。施設フェンス脇を通り、ススキが一面に茂る大草原に出る。いつ見ても白い展望台が真っ青な空に映える水石山の象徴的な風景だ。三角点付近からは大海原が望め、遅れてくる相棒を眺望の展望台で待つ。
※新協地水(株)代表取締役