赤面山(1,701m)は那須連山の主脈から離れた静かな展望の山です。那須連山は、栃木県那須町から福島県西郷村にまたがる成層火山群の総称であり、北から主脈沿いに、三本槍岳・朝日岳・茶臼岳・南月山・黒尾岳が那須五岳として知られており、四季を通じて一大観光地となっています。火山活動史としては、北側にある甲子旭岳が60万年前に噴火、次にやや南側にある三本槍岳が40万年から25万年前に噴火、20万年前から5万年前までさらに南側の朝日岳と南月山が活動しました。これらの火山は流動性の少ない安山岩質溶岩以外に流動性の良い玄武岩質溶岩を噴出し、広大な裾野を形成しました。
赤面山は、主脈から東に張り出した支尾根上にあり、地質は三本槍岳後期噴出物(安山岩質溶岩)から構成しています。那須岳全体としてみると、赤面山は連山の北東側にあり、あまり目立たない山ですが、標高1,701mからは360度の視界が開け、素晴らしい眺望が楽しめます。
これで那須連山の山紀行は「土と水」に三度掲載することになり(47号 初冬の那須、58号 彩秋の流石山~
三倉山)、私にとってかけがえのない山域であることが改めてわかります。赤面山の山開きは、シロヤシオが見頃となる5月の最終日曜日に西郷村主催で開催されており、何度となく私も参加をしました。今回は、木々を渡る風にも夏の気配が薫る梅雨前特有の風景を楽しみに、旧白河高原スキー場登山口から赤面山頂を経て支尾根肩部に当たる岩峰(標高1,864m)を目指す山行を紹介します
☆2017年6月11日(日) 快晴
前日(10日)は、甲子旭岳とアヅマシャクナゲの風景を楽しみに久しぶりに、三本槍岳に登ったが山頂で突然の雷雨となったことから、快晴の下(11日)、再び那須連山の新緑を楽しみに赤面山へ向かった。登山口となる旧白河高原スキー場には午前9時に到着、すでに広い駐車場には車が14〜15台駐車してある。遠くで爆竹の音が頻繁に聞こえていることから、山菜取りの人たちが多く入山しているのがわかる。爆竹の音で逃げ場を失った熊に遭遇しないことを祈りながら、9時14分にスタートする。本日の比高は駐車場の標高が1,091mであることから、山行目的地となる支尾根肩部岩峰(以下、岩峰)までは773mとなる。広大な駐車場跡地左手奥から、スキー場内の作業道だったガレ場を約1時間ただひたすら登ることになる。荒れたガレ場は、石がゴロゴロと大変歩きにくく最初から辛抱の登山道となるが、高原に吹く風はやさしく時折聞こえるカッコウのさわやかな鳴声が、救いの山行となる。
第1リフト跡から右に折れ第2リフトをくぐりさらに荒れた大石ゴロゴロのガレ場をひたすら登ることに、時間とともに直射日光が首から背中を熱し、逃げ場となる樹林がないスキー場歩きは大変辛く、日焼けが大嫌いな相棒の苦言と重なり、心身ともに辛抱の苦行となる。最終リフトが見えブナの豊かな森も視野に入る直前の急登で、先にスタートしていた20人前後の団体を一気に追い抜くと、10時15分(スタートして1時間1分)で登山入口となるブナ林に入る。今年初めて見る渡蝶アサギマダラの優雅な舞を鑑賞しながら、少し遅れて団体を一気に追い抜いてきた相棒を待つ。ここからは、ようやく強い日差しを避けることができるブナ林となり、歩き始めてすぐに⑧の標柱が設置されている三叉路に出会う。この標柱は、約500m間隔で「那須甲子少年自然の家」から設置されており、案内板として重宝されている。ブナからダケカンバの林に変わると森林限界も近づき、アヅマシャクナゲやヤマザクラなどの灌木帯、さらに笹原へと植生が変化をして、一気に視界が広がる。南側には、三本槍岳から東南東に延びる中の大倉尾根の稜線そして朝日岳と茶臼岳の素晴らし風景が眺望できる。日差しは強いが灌木帯とはいえ、樹林帯の中の登山道のため、心地よく進むことができる。道は、一旦大きな転石を含むガレ場となり、⑨の標柱が設置されている。(⑧の標柱から13分)さらに進むとローム状の登山道となり、雨水で溝状に大きく抉られ、大変歩きにくいがここまで来ると山頂直下となる。ガレ場の稜線に出て左に進むと、午前10時49分,登り始めて1時間35分で案内板が設置してある山頂1,701mに到達する。山頂からは那須連山が手に取るように眺められ、特に旭岳の美しい三角錐の山容がまぶしく輝いて望める。山頂では3名ほどが休んでいたため、「こんにちは」とあいさつを交わし、簡単な行動食(バナナとスナック)を口に放り込む。スキー場登攀時は、日差しの強さに悪戦苦闘していた相棒は、今度は寒いと言って、少し立ち止まり風景を眺め、さっさと北温泉分岐に至る登山道を一気に駆け下りて行ってしまった。
11時2分、北温泉分岐に至るルートの鞍部(標高1,639m)を過ぎて、再び道は登りとなる。同じ灌木帯の赤面山頂までの登山道と比べると、樹木の枝や笹に遮られ遠目に道は不明瞭であるが、腰を屈め視線を低くすると踏み固められた登山道がはっきりと確認できる。が、相棒は以前、中の大倉尾根登山道で熊の存在を確認した恐怖から、大きな声で童謡を唄いながら歩いて来る。午前11時15分、目線で赤面山とほぼ同じ高さとなると、不明瞭だか前岳付近となる。(表題写真参照?) 前岳を過ぎると、急登そして分岐手前の雪渓となるため、相棒待ちをしていると、前方から来た人が「雪渓は、斜度がきつくて難儀そうなんで、戻ってきた」とのこと、このことは相棒には伝えず「滑っても、止まるから」と一声かけ、先に雪渓を渡ることに、ザクザクした雪面は登山靴を蹴り込み、確実に一歩一歩進み、渡り終えた安全なところで相棒を待つことに。午前11時43分に北温泉分岐を通過、ここから目的地の岩峰(標高1,864m)は目前、のんびりとザレ場を登り、午前11時53分,登り始めて2時間39分で目的地へ。ここから三本槍岳の山頂は、目と鼻の距離であるが、混雑を避け大休止とする。西に目を移せば、残雪を覆った、燧ガ岳や会津駒ヶ岳など南会津の山々が見渡せる絶景ポイントであり、ゆっくり塩タンメンを作って約1時間休むことに。素晴らしい風景を心と目に焼き付けて、一気に下山。
【登り2時間39分、下り2時間1分、積算距離 約12.0km】