1.はじめに
2020年10月3日、新協地水株式会社が郡山市西部第一工業団地に建築を進めておりました本社・再生可能エネルギー研究開発施設（以下、本施設）が落成し、2020年11月1日に本施設の営業を開始いたしました。
本施設は再生可能エネルギー利用を含む省エネ技術・創エネ技術の採用により、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建築物であるNet Zero Energy Building（ネット・ゼロ・エネルギー・ビル：ZEB）として、一次エネルギーの正味の消費量を0％以下とすることを実現した『ZEB』として認定されました。
2.施設建築の経緯
新協地水株式会社では創立45周年を機に新社屋の建設を構想し、その準備に着手いたしました。福島県の再生可能エネルギーへの取り組みをうけ、弊社でも再生可能エネルギー、特に地中熱利用に関する取り組みを始めておりました。
本施設への省エネルギー技術として地中熱利用設備の導入を検討するなか、外皮性能の向上や太陽光パネルの設置による創エネ技術を組み合わせることにより、『ZEB』化の達成が実現できることに気が付きました。
結果的に環境省の補助金を活用することで一次エネルギー削減率100％となる100%『ZEB』化を実現いたしました。
3.設備の概要
本施設では、消費するエネルギーを減らすための技術であるとして、
①建物内の環境を適切に維持するために必要なエネルギー量（エネルギーの需要）を減らす「パッシブ技術」
②エネルギーを効率的に利用するための技術である「アクティブ技術」
③必要なエネルギーを作る技術となる「創エネ技術」
をそれぞれ取り入れています。
以下に本施設の規模と設備概要を示します。
また、本施設は倉庫を含めCLT材（直交集成材）を全面的に使用していることも特徴のひとつです。このCLT材は強度が高く断熱性にも優れている一方で、木材であるため見た目にも優しい素材です。
このCLT材を全面に使用することで、柱をなくした大空間を確保し、スぺ―スを有効活用する工夫も実施しています。
4.100％ZEB化の達成と今後の展望について
本施設は、省エネ技術により一次エネルギー消費量を52％削減し、残りのエネルギー消費を創エネ技術の採用で補うことで、一次エネルギー消費の正味の削減量が103％となり、100％ZEB化（『ZEB』）を達成しています。2019年度までにZEBリーディング・オーナーに登録された『ZEB』化の建築物では東北初となります。さらに、地中熱利用設備を導入した『ZEB』化建築物は2019年度の段階で全国4例目となるようです。
今後、再生可能エネルギーに関する新たな実証試験として、敷地内に設置した深井戸（深度60m）利用したオープンループ型地中熱交換の効果実証や地下水熱・排熱利用技術開発の実証を行うことを計画しております。
また、本施設が位置する郡山市の西部工業団地には、再生可能エネルギー利用の技術開発を推進するFREA：［国立研究開発法人 産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所］や福島県ハイテクプラザが開設されています。
今後、これら施設を結ぶ環境学習コースのようなツアーが企画されることで、学生・生徒・市民への環境教育の場として本施設が活用できるのではと考えております。
本施設では随時見学を受け付けております。皆様のお越しを心よりお待ちしております。
