1.はじめに
東北地方を中心に甚大な被害をもたらした東北地方太平洋沖地震の発生から10年の節目を迎えました。
今回は浜通りのいわき市丘陵部で自噴する「久之浜湧水」と津波の被災地である久之浜地区を訪れました(写真-1、写真-2)。
1.はじめに
東北地方を中心に甚大な被害をもたらした東北地方太平洋沖地震の発生から10年の節目を迎えました。
今回は浜通りのいわき市丘陵部で自噴する「久之浜湧水」と津波の被災地である久之浜地区を訪れました(写真-1、写真-2)。
2.湧水の位置について
磐越自動車道のいわき四倉インターチェンジを降りて左折し、コンビニのある十字路をさらに左折します。
県道35号を北上して県道247号を右折します。県道247号は路面状態が悪く、道幅も狭くなるため注意して進んで下さい。1.0kmほど進むと左側に勢いよく自噴する「久之浜湧水」見えてきます。
円筒状の立ち上がりの2箇所から地下水が自噴しており、目立ちます。水量は併せて60L/毎分程度です。
3.湧水の水質について
湧水を採水して実施したイオン分析結果を基に作成したトリリニアダイヤグラムとヘキサダイヤグラムを示します(図-2、図-3)。
採水時の現地測定では、pHが7.53と湧水としてはやや高いアルカリ側の数値を示しています。
作成したトリリニアダイヤグラムでは久之浜湧水の水質は領域Ⅰにプロットされ、循環性地下水の性質を示しています。また、ヘキサダイヤグラムからはNa+、K+の割合いに対してCl–が少なく、HCO3–が比較的多いことも読み取ることができました。
水質が若干アルカリ側であり、炭酸水素イオンも多いことから、やや深い場所を流動する地下水を取水対象としているのではと推測できます。
4.地質と湧出機構
湧水周辺部の地質分布図を示します(図-4)。
「久之浜湧水」は地質図上では白亜紀に堆積した小久川部層と新第三紀に堆積した石城層との境界部に位置することが分かります。また、地層の境界面(層理面)は東側に約20度の傾斜を有しています。
湧水が勢いよく噴き出していることから、構造的にボーリング井戸であり、被圧された地下水を取水する自噴井戸と予想されます。
中粗粒な砂岩は地下水の帯水層の場合が多く、層理面も地下水の水みちとなる場合があります。「久之浜湧水」はこのような地下水を取水対象としていると考えます。
5.あの日から10年・・・
湧水を訪ねたあと「いわき市地域防災交流センター久之浜・大久ふれあい館」に足を運びました。
本施設は「震災伝承施設」に登録されています。館内の防災まちづくり資料室では久之浜地区における震災発生時やその後の避難生活の状況、防災への取り組み等が体験者の方の証言や当時の映像と合わせて展示されています。
今回、久之浜地区だけで震災関連死を含め69名の方が亡くなったことを知りました。ネットで見聞きする体験とは大きく異なり、実際に自分が目にしている場所で起きた事象であると理解すると、胸が詰まる思いがします。
震災後に設置された防災緑地の上からみる太平洋は、やや波はあるものの水平線まで見通せる穏やかな状態でした。
10年前のあの日、眼前の風景が一変しました。
清らかな湧水は私たちの心を癒してくれますが、時として水自体が畏怖の対象となることを忘れてはなりません。
あの日の出来事を風化させないよう、心に留めていきたいと感じた一日でした。