土と水第75号の思い出の地盤工学(1)では、土質力学の源流が今から200年以上前のCoulomb(クーロン)の摩擦則によるせん断強度式とRankine(ランキン)の塑性平衡条件下における応力解析法までさかのぼることを記しました。これらは、土圧、斜面崩壊,基礎等の解析・設計において種々の工夫が施されて、現在も実務で活用されていることも示しました。また、地下水流に関しては、Darcy(ダルシー)法則に基づく透水解析法が地盤中の水の浸透問題を解く際の基本的な方策となっていることを示しました。さらに、道路,堤防,ため池,高フィルタイプダム等の盛土構造物の設計・施工に必須の基本情報となっているProctor(プロクター)が見出した「土粒子は破壊されないという仮定の下においては、密になると間隙比が小さくなり、最大の締固め密度を生むような含水状態が存在するという最適含水比の存在を示した締固めの原理」は、理論的な裏付けにはなっていないものの実務で用いられていることも示しました。そして、Terzagi(テルツアギー)は、土材料や地盤の応力~変形~強度特性を「有効応力の原理」により論じ、圧密モデルを作成したことにより、軟弱地盤解析の実務において圧密沈下の計算に用いられていることを示しました。
このように、土質力学は、CoulombやRankineの古典的な土の力学にDarcy法則やProctor原理及びTerzagiの有効応力の原理等を取り込みながら、土が保有する粒子論的な意味での基本物性を吟味し、実務に適用するように発達してきました。しかし,この土質力学だけを知っているだけでは土構造物の築造や建物などの基礎構造物を構築することは出来ません。このためには,地盤工学的アプローチも必要となります(図-1参照)。
そして、土の問題と地盤の問題を解決するためには、まずはじめに、地盤調査(土質調査・地質調査とも呼ばれる)を行って,地盤の状態を把握する必要があります。