1.はじめに
今回、湧水の取材時期が5月の連休明けとなりました。取材先を考えていましたが、まだ桜が咲いている場所はないかとの思いから県内でも桜の開花が遅く、かつ有名な一本桜である「越代の桜」に足を運びつつ、以前取材した古殿町の「越代の延命清水」を訪問することにしました(写真-1)。
1.はじめに
今回、湧水の取材時期が5月の連休明けとなりました。取材先を考えていましたが、まだ桜が咲いている場所はないかとの思いから県内でも桜の開花が遅く、かつ有名な一本桜である「越代の桜」に足を運びつつ、以前取材した古殿町の「越代の延命清水」を訪問することにしました(写真-1)。
2.位置について
古殿町の中心街を通る県道14号(いわき石川線)を南東方向に進み、県道135号線入口を左折、北上するルートが近接する「越代の桜」への案内看板も多く、お勧めです。有名マップアプリでは、いわき上三坂小野線経由(県道20号→県道135号)が選択される場合がありますが、途中道が狭い場所が複数あり、車の通行に注意が必要です。
「越代の桜」の前を通過して10分ほどで、道路左側に整備された水汲み場が見えてきます
車も停めやすく、取材時にも湧水を汲む人が頻繁に訪れていました。
3.湧水の水質について
湧水を採水して実施したイオン分析結果を基に作成したトリリニアダイヤグラムとヘキサダイヤグラムを示します(図-2、図-3)。
採水時の現地測定では、pHが7.78、電気伝導度が12.0mS/m、湧水量は全体で約30.0(L/分)でした。作成したトリリニアダイヤグラムからは領域Ⅰにプロットされます。また、ヘキサダイヤグラムもやや炭酸水素イオンの割合が多い六角形に近い形を示しています。
一般的な地下水であり、海水や温泉水等の影響を受けていないことが分かります。水質的に目立った特徴はありませんが、実際に口に含んで飲んでみるとやや甘い感じがしました。湧水が持つ不思議な性質が、甘く感じさせるのでしょうか。
4.地質と湧出機構
湧水周辺部の地質分布図を示します(図-4)。
本地域の周辺部は岩石が圧力や熱を受けたことで変成した変成岩類が広範囲に分布する阿武隈変成帯の一部としても有名な地域です。
地質図からみると「越代の延命清水」が湧出する位置はちょうどアプライトやペグマタイトの小貫入岩体の分布域にあたります。湧水は岩盤の亀裂部のほかに貫入岩体沿いに発達した亀裂部に沿って集まり、湧出しているのではと考えられます。
5.自然の恩恵に触れる小旅行
湧水の脇にその由来を説明する碑が設置されています。武士が湧水を飲んで腹痛が治まり元気になったこと、その子孫が代々山を越えて湧水を飲みに来たことから「越代(こしだい)」という地名が生まれたこと、桜を植えて自分の延命と桜の成長を願ったことから「延命清水」と言われるようになったこと・・・。
非常に興味深い内容が説明されています。今回、私が実際に湧水を飲んでみて感じた「甘い」という感想も、あながち間違いではないようですね。
湧水の取材の帰りに「越代の桜」を訪れました。桜のシーズンが終了したこともあり、私が訪れたときは周囲に誰もいない状況で、桜も残念ながら葉桜になっていました。湧水を汲みに来ていた地元の方にお話を聞いたところでは、一週間前には散り始めたとのことでした。
「越代の桜」は山間部の斜面上に存在しており、道路から見上げるようになりますが、その雰囲気には圧倒されます。まさに大樹と呼ぶにふさわしく、眺めていると表現するのが難しい感情が湧いてくる不思議な場所です。いわゆるパワースポットとはこのような場所のことを言うのではないでしょうか。
現在の社会情勢はまだまだ不安定なことが多く、気持ちもふさぎがちになりがちです。ただ、今後は徐々に観光地へ足を運ぶことが可能になるかと思います。
長い時間を過ごしてきた湧水や桜の木はただただ私達を見ているだけかもしれませんが、私達から足を運ぶことでその恩恵を感じることはできます。今回の体験がこれからの新しい生活を開始していく弾みになると感じることができました。桜の季節は終了していますが、実際に現地を訪れることで自然の恩恵を体に感じていただければと思います。