土と水第80号の地盤の問題と地盤調査(2)-地盤調査の基礎知識-では、地盤調査の重要性や地盤調査の役割を記し、地盤調査の目的が土木・建築構造物の建設,地盤災害対策(防災),構造物の維持管理及び環境保全など地盤調査の対象業務によって異なることを示しました。ここでは、建設事業(土木・建築構造物の建設)のための地盤調査計画の立案について記します。
その前に、地盤力学と地盤工学について若干説明させていただきます。
地盤力学(土質力学と岩石力学)と地盤工学(土質工学と地質工学)の関係性について、斎藤1)は、「地盤力学は科学(science)であり、地盤工学は技術(art)である」と書いています。つまり、「科学は真理の探究を目的とし、技術は、現実問題の解決を図るものであり、技術にとって科学は有用な基盤ではあるものの、十分な条件ではなく、地盤力学のどの成果も現実問題の解決のためには、実構造物についてその成果が確かめられ、必要な修正がなされなければならない」とも書いています。
地盤調査は、地盤力学と地盤工学をつなぐ直接的な実務であると言えます。つまり、地盤調査は、原位置試験や試料採取及び物理探査などを行って、地盤の構造や物理特性を把握し、採取した試料を室内に持ち帰って物理的特性や化学的特性及び力学的特性に関する試験を行います。これらの結果をもとに構造物が築造されることになります。このため、地盤調査の計画を立案するためには、地盤力学や地盤工学などの知識と十分な経験が必要となりますが、これで十分ではなく、土木構造物や建築構造物に関する知識と経験も必要となります。
つまり、地盤調査は、実務として測量業務の後に行われ、その結果は、設計・施工に受け継がれるものであるため、調査が不十分であったり、調査の誤りや調査結果の判断が不適切であった場合には、設計や施工において大幅な手戻りが生じ、工期延長となったり、供用年数が短くなったりする可能性もあるからです。したがって、これらのことを肝に銘じて調査計画の立案を行うことが重要です。