その1・2では…
葛尾村でエビの陸上養殖をはじめたきっかけ、養殖のようすを紹介しています。
土と水85号・86号をご参照ください。(新協地水ホームページにも掲載しています)
その1・2では…
葛尾村でエビの陸上養殖をはじめたきっかけ、養殖のようすを紹介しています。
土と水85号・86号をご参照ください。(新協地水ホームページにも掲載しています)
今後の展望
①エビの陸上養殖を中心としたSDGs産業クラスター化構想
弊社は、バナメイエビの陸上養殖を実施するには、気候面・物流面で大変不利である山村の葛尾村で挑戦しています。
それには、ただ単に、葛尾村でエビの養殖だけをやりたいのではなく、エビの養殖をコアにして、産業クラスターを創り、福島第一原子力発電所事故からの復興を目指したいという想いがあります。
葛尾村でエビの陸上養殖を行うには、寒冷地であるがゆえに、冬場の暖房や水温を加温するためのヒーターなどに、多くの燃料費・電気代がかかります。また、エビを育成するためには、多くのエサが必要となり、飼育排水も発生します。
それらはすべて原価に計上されるものであり、エビの陸上養殖を事業化する上で、これらの原価を抑制することが極めて重要な課題と言えます。
これらの課題を解決するために、弊社が自社だけで解決しようとするのはなく、日本全国の様々な技術を有する企業様に、同じく葛尾村に進出していただき、弊社のエビの陸上養殖施設を活かして、様々な技術開発の実証フィールドとしていくことを目指します。
例えば、下記のような取り組みが考えられます。
(1)エネルギー自給
エビの陸上養殖に必要な電気や燃料について、太陽光発電や太陽熱温水、ヒートポンプシステムなどの自然エネルギーを用いたエコな電気や加温方式により、陸上養殖のエネルギーを賄う仕組みを構築する。最終的には、電気や燃料を一切購入しない完全自給式のプラントとする。
(2)残渣利用
我が国において社会問題となっている私たちの日常生活から発生する食品残渣を用いて、エビのエサを生産する。また、エビの陸上養殖から発生する残ったエサやフンを用いて、別の生き物を養殖するといった複合養殖の実施を行いたい。
(3)排水利用
エビの養殖排水には、アンモニアや硝酸塩などの窒素化合物が多く含まれる。これらを栄養分とする植物、例えば耐塩基性の高いアイスプラントなどを育てることにより、飼育水系内から窒素化合物を除去するとともに、海のない山村での新たな地域野菜を創出することが可能となる。
(4)防災機能
葛尾村は、近年のゲリラ豪雨等による土砂崩れ等によって孤立するリスクがある。万が一の時には、深井戸水による安全な飲み水の確保のほか、飼育しているエビをタンパク源として供給することにより、防災機能として貢献することができる。
(5)情報・通信技術
近年、極めて高い関心を集めている陸上養殖においては、省力化に資する情報・通信技術は必要不可欠である。いかに少ない人員で飼育管理を実現し、データに基づく生産・出荷予測を可能とするかが事業化のキーサクセスファクターとなる。最新のICT/AI技術を陸上養殖の業界にマーケットインしていくための実証フィールドとして活用する。
②葛尾村におけるエビのアミューズメントパーク構想
弊社がバナメイエビの陸上養殖を建設した葛尾村は、従来、酪農や畜産が盛んな地域でしたが、東日本大震災と福島第一原子力発電所事故の影響により、避難を余儀なくされ、現在徐々に住民の帰還が進むとともに、新たな移住者が増加し始めています。
一方、現在の葛尾村においては、観光や旅行としての最終ゴール地となる観光コンテンツが少なく、同じ福島県民であっても、葛尾村がどこにあるのか分からない、知ってはいるけど行ったことがない、などといった声をよく聞きます。
筆者は、葛尾村に移住して、約2年半が経ち、自然豊かな葛尾村の魅力、そして村民の互助の精神に基づく温かさに触れてきました。
いまだに復興途上である葛尾村において、新たな観光コンテンツを創出し、交流人口を増やして、より多くの方に葛尾村の魅力を知っていただくことが、長期的な視点での震災と原発事故からの復興に繋がるものと確信しています。
弊社は、この葛尾村という寒冷地の山村で、日本人が大好きなエビの陸上養殖を行っているという極めて尖がった事業を通じて、「あの村に行くと安全で安心な美味しいエビが食べれる」「自分たちが食べているエビの生態を知り、食の安全について考えたい」「日本で例をみないエビの釣り堀を体験したい」といった葛尾村ならではのコンテンツを創出し、葛尾村のみならず福島県浜通り地域全体の復興に貢献したいと考えています。
③子供たちで賑わう葛尾村を目指して
弊社では、2023年7月に、福島県内の9チーム、横浜からの招待チーム1チームの全10チーム、小学4年生以下を対象として、第1回HANERUカップ少年野球大会を開催しました。
今年度は、2チーム増えて12チームにより、第2回を開催しました。
現在の小学4年生以下は、東日本大震災並びに福島第一原子力発電所事故を知りません。そのような子供たちに、全村民避難を余儀なくされた葛尾村の実情を知ってもらうとともに、当時浜通りに住んでいて避難された方々が、子供たちが頑張る姿を見て、心の復興に繋げてもらうことを目的に実施しました。
2024年8月現在、葛尾村には小学生が17人しかいません。そのような葛尾村に、全チーム子供200人、ご父兄及び関係者300人の約500人が集まりました。
このような活動を通じて、福島県内外の方々に葛尾村の魅力を知ってもらい、将来、HANERU葛尾で働きたいと思ってくれる子供たちが出てきてくれることを願っています。