2.方法
図-1に示すように,B-1,B-2,P-1,P-2は地中熱交換器であり,B-No.3,B-No.4は機械ボーリングを行いTCP測定用のロッドを設置した.2023年度はTRTを2孔(B-1,P-1),ケーブルTCPを2孔行った.TRTは,温水循環試験を実施した.TRT装置はNPO法人地中熱利用促進協会から発行されたTRT装置認定申請の手引き5)に則った認定装置である.また,ケーブルTCPはφ66mmで掘削したボーリング孔B-No.3孔とB-No.4孔にφ40.5mmの測定用ロッドを設置して,測定にはヒーターケーブルとセンサー間隔1.00mの温度センサーケーブルを使用し,加熱試験と回復試験を行った.熱応答試験と別に観測孔を2022年に2ヶ所(観測孔No.1,No.2),2023年に1ヶ所(観測孔No.3)設置して地下水観測を行った.自記水位計によって2022年9月から観測孔内の水位を計測した.
3.結果
図-2にK2地点のB-No.3~B-No.4間およびB-No.3~B-No.2間の地層断面図を示す.GL-20~25mまで粘性土主体で礫混じり砂をはさみ,それ以深は,風化凝灰岩である.表-1,図-36)にTRT,ケーブルTCPの見かけ熱伝導率および観測孔の水位を示す.TRTの結果では,KB1孔は他の3孔よりも見かけ熱伝導率は大きな値を示している(最大値8.7,最小値3.1).その他の3孔の見かけ熱伝導率は,最大値3.4(KB2,2022年9月),最小値1.0(KP2,2023年1月)である.見かけ熱伝導率は4孔ともに大幅に変動しており,測定のたびに見かけ熱伝導率は低下した.2023年の中間期および夏季に行ったTRTでは,前年の測定結果と比べて,見かけ熱伝導率の低下の幅は小さかった.
ケーブルTCPの結果は加熱時の各深度の平均値である.TCP-No.3孔では最大値1.6,最小値1.3,TCP-No.4孔では最大値1.6,最小値1.4となり,全体としては変動が小さかった.一方,深度によっては,見かけ熱伝導率は時季によって変動しており,概ね観測孔の水位であるGL-4~6m程度は大幅に変動した(図-4).観測孔内の水位は,自記水位計による測定を開始した2022年9月からGL-5m程度であったが,2023年5月に1m程度上昇し,その後の付近の農業用水の通水停止時に0.5m程度の水位が低下しており,農業用水通水時に水位が高くなっている.