特集 災害 
宮城県北部地震被災地ルポ
代表取締役社長 谷藤允彦



・宮城県北部地震
 7月26日、宮城県北部を震源として、震度6以上の地震が1日の内に3回発生した。午前0時13分(M5.5・最大震度6弱)、午前7時13分(M6.2・最大震度6強)、午後4時56分(M5.3・最大震度6弱)。
 死者ゼロということで、揺れの大きさに比べて被害が軽微にとどまったことが意外に感じられた。地震の被害は、当初停電と断水について大きく報じられたが、時間が経過して被害の実態が明らかになるにつれて、住宅の損壊の激しさが注目されるようになってきた。
 宮城県の8月1日現在のまとめによれば、住宅損壊は8185棟(全壊300棟、半壊1598棟、一部損壊6287棟)に上る。被害の集中した、河南町、矢本町、南郷町、鳴瀬町、鹿島台町では、30%強の世帯が被害を受けた計算になる。


震央分布
(自動処理7/26 0:13〜7/28 15:00)震源域周辺を拡大したもの
M5以上の地震は☆印で表示(ただし、0:13の地震は処理の都合で表示されていません)

分布図

東北大地震・噴火予知研究観測センター「速報 宮城県北部の地震」主な地震と余震活動概況より
http://aob-new.aob.geophys.tohoku.ac.jp/030726/


・現地ルポ
被害状況
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「河南町」 屋根瓦の崩壊/土台と家屋に生じたズレ

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「河南町」 路面に生じたヒビ割れ

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「矢本町」 斜面崩壊

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積みブロックの崩壊

 8月12日に、国道108号線を古川方面から東に進んで被害地域を車窓から眺めた。
 涌谷町あたりまでは沿道に著しい被害の様子は見えなかったが、南郷町境界あたりから、江合川堤防上に重機や測量作業の姿が目立ち、地震災害地域に入ったということが感じられるようになる。
 河南町前谷地駅に近づくと、屋根にブルーシートを張った家が目立つようになる。ブルーシートに包まれた家は、ほとんどが瓦屋根であり、古い家だけでなく、新築直後と思われる家の屋根瓦が落下している家も見かけられた。
 前谷地から南下して、旭山山地に近づくと、ブルーシートは一段と目立つようになり、道路のひび割れ、段差がいたるところに見られた。補修工事作業中の個所が多く、通行止めや片側交互通行になっている場所が多い。
 竹や松・杉に覆われた斜面の崩壊も数多く見られ、土止めブロックやブロック塀の破損がいたるところに痕跡をとどめている。
 河南町から矢本町北部一帯では、損壊した住宅を撤去した跡や撤去作業中の様子が多数見られた。
 駆け歩きの車窓から見た範囲では、地震被害は、旭山山地を中心に鳴瀬川下流と江合川下流に挟まれた東西10km南北20km程度の範囲に集中しているようである。被害は、軟弱地盤の分布する平坦地よりは地盤の固い山地周辺のほうが著しい印象を受けた。また、被害は住宅の屋根、特に瓦屋根に集中的に発生しており、ざっと目には、瓦屋根は50%くらいが損傷していたように見受けられた。
 M7を越える大地震では、地盤の液状化や盛土地盤の崩壊により大被害を生ずる例が多かったが、宮城県北部地震では、地盤の変形による被害はあまり目立たないようである。
 地震の規模自体は小さくても、直下型で浅い場所に発生すれば、固い地盤上にも大きな損害を与えるものであることを示しているように思われる。




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