南関東ガス田について
渡辺 匠



南関東ガス田の範囲は明確ではありません。
およその目安と思ってください。
 この2月、温泉掘削工事中に噴出した天然ガスに引火したというニュースを覚えている方も多いと思います。作業中の事故であり安全対策にいっそうの配慮が必要だと同業者として再認識いたしました。
 とはいえ東京の地下から天然ガスが噴出したことに驚きましたので、今回話題となった「南関東ガス田」について現代の百科事典であるインターネットで調べてみました。



南関東ガス田
 南関東ガス田は図のとおり南関東に広く分布している水溶性天然ガス鉱床です。天然ガスの鉱床としては地下水中に溶けている「水溶性ガス」、原油に溶けている「油溶性ガスもしくは油田ガス」、地層中にガス単独で封じられている「構造性ガスもしくはガス田ガス」、炭鉱から出るものを「炭田ガス」と産出する鉱床の特徴から区別しています。日本でも上記4種類の鉱床が各地にあり、新潟県には構造性ガス田が多く、国内では最大の生産量となっています。
 南関東ガス田の可採埋蔵量として概算されているのは3,840億m3。日本の天然ガス消費量は年間765億m3(2004年度統計)ですから、ざっと5年分はあります。千葉県での産出量が年間4.6億m3(2004年)と埋蔵量に比して少ない産出量ですが、水溶性ガス鉱床は地下水をくみ上げてガスを取り出すゆえに、地下水をくみ上げすぎると地盤沈下が起きやすい弱点があります。
 昭和40年代までは東京から千葉の東京湾岸で天然ガスを産出していましたが地盤沈下への規制でほとんどのガス井が停止しました。(かつての船橋ヘルスセンターも当初はガス井開発がきっかけとのこと。)現在では千葉県の茂原地区にガス井が集中しています。



茂原型ガス鉱床
 天然ガスの鉱床が東京湾岸地域よりも浅いことと茂原地域では水に溶けているメタンガスの量が多いことから効率のよい生産ができるとのこと。茂原地区でのガス井では地下水に溶けているメタンガスが平均で水の体積比の4倍以上(1m3の水から4m3以上のメタンガスが産出される)、時には20〜30倍と高く、一般的な水溶型ガス井が1.8〜2倍に対して異常にガス比が高いのが特徴です。茂原型の天然ガスの起源として海洋性の有機物がバクテリアに分解されたと考えるよりも陸上の動植物が急激な土砂移動で海底に運ばれたとする考え方や、かつての海底下にメタンハイドレートがあってそれが埋まってガス鉱床になったという説もあります。
 天然ガス採取のためくみ上げた地下水(かん水)にはヨウ素が多く含まれており海水の二千倍の高濃度であることからヨウ素の産出では世界の生産量の3割を千葉県内から出荷しています。ヨウ素は元素であり化学合成では作りえないものです。地下資源が乏しい日本でもヨウ素では輸出大国となっています。茂原でのヨウ素の起源として海水中のヨウ素を海洋生物による濃集とした場合に前述のガス比が高い理由との関係で単純には考えにくく研究途上となっています。こうして天然ガスとヨウ素を取り出した後、くみ上げた地下水は再び地下に戻され地盤沈下を防いでいるとのこと。

謝辞
 参考としましたHPと文献をご紹介します。勉強になりました。感謝いたします。
天然ガス鉱業会 http://www.tengas.gr.jp/
関東天然瓦斯開発(株)http://www.gasukai.co.jp/gas/rekishi_gas.html
日本天然ガス(株) http://ntgas.co.jp/index.html
産総研2002年成果報告会「水溶性ヨウ素-天然ガス鉱床の地球科学的研究」金子信行
地質ニュース510号「茂原型天然ガス鉱床はメタンハイドレート起源か」名取博夫


※1  新協地水(株) 総務部長
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