シリーズ『水へのこだわり』(VOL.2)
協和木材株式会社

阿部 睦美※

 前号では、酒造り…『飲む水』のこだわりを取材しましたが、シリーズ第2回の今号では、『作用』する水…工業と水のつながりをアプローチすることにしました。
 『水』がテーマですが、私自身“大人の社会科見学”と称し、大いに勉強させていただいております。電話やインターネットだけでは分からない!水に関する企業やお店の生の突撃見学の模様を皆さんにお伝えできればと思います。

〜いざ、協和木材株式会社へ〜

 福島県の南端に位置する東白川郡塙町。塙町の中心地から北東へ車で10分程度走らせた場所に、塙林間工業団地があります。
100mほどの坂を登ると、山を切り開いて造られた工業団地が大きく広がっています。その団地内でもひときわ存在感を現しているのが『協和木材株式会社』さんです。敷地内に足を踏み入れると、敷地の広さと新工場の真新しい輝きに思わず目を奪われてしまいます。向き直って辺りの様子を眺めてみますと、眼下には山々が大海原の青い波のごとく連なっております。山々が作る美味しい空気と、敷地内に積まれた木材の清々しい香りに包まれ、車から降りた瞬間から体に力が漲ってくるようです。

協和木材とは 〜協和木材の歴史〜


懇切丁寧にご説明をしてくださった、佐川社長(上写真)木のような温かみのある方でした。ありがとうございました!

 創業のそもそものきっかけは、現在の佐川社長のお父様が昭和28年に営林署(現在の森林管理署)を退職し、御自分で木材業を始めたことから、協和木材の歴史がスタートする。
 昭和48年に『協和木材株式会社』として設立。
 林野庁長官賞を受賞し、輝かしい業績を残すとともに、組合組織の強化や若手育成などにも積極的に取り組み、国産材の製材業界において、国内トップクラスの生産規模を有する製材大手企業となる。そのような企業規模の拡大に伴い、塙町の中心地から現在の場所に本社工場を移転したのが、昨年の平成18年8月である。

質問者:阿部(以下『阿部』)
 たくさんの木材が積まれていますね!(上記写真)
これらの木材は何の木を加工したものですか?また、何に使われるのですか?

お 話:協和木材 佐川社長(以下『社長』)
 この工場では国産木材の『スギ』と『マツ』を製材加工し、出荷していますが、それらの木材は主に住宅建築に使われています。スギの大部分が住宅メーカー・工務店向け。規格に合わせて、大工さんが使いやすいようにこちらで一次加工しています。マツはスギに比べ、製造量は少ないですが、数奇屋造りや寺社建築用の高級木材としてオーダーメードのような形でそのつど希望に合わせて加工します。そのほか、土木関係の資材、ホームセンターで並ぶ販売用の木材や公園の遊具などです。

阿 部:出荷先(取引先)は県内が多いですか?

社 長:住宅着工数のデータを見ますと、関東・首都圏だけで日本全国の約40%を占めており、巨大な市場となっています。その市場に比較的近いこともあり、主に関東・首都圏向けに出荷しています。


工場内を細やかに案内・説明してくださった、青砥さん。お忙しい中ありがとうございました。

こちらが木材乾燥用のボイラー。高温と中温のボイラー室があり、合計で9日間 ほど入れたままで乾燥させる。

阿 部:木材加工と水に関連性はあるのでしょうか?

社 長:工場内で水を使用するのはボイラーで、熱媒体としてスチームを作っています。そのボイラー用に毎時5tの水が必要です。
 その全ての水を井戸で汲み上げています。

阿 部:スチームはどの作業工程で使用されるのですか?
 求められる水質はどのようなものでしょう。

社 長:木材は含水率15%程度の気乾状態(大気の湿度と平衡状態にある)にあると、割れやそりなどの『あばれ現象』を防ぐことができます。昔は木材の乾燥といえば天然乾燥でしたが、ボイラーのスチームを使って乾燥させることで、出荷までの時間短縮と製品の高品質化を図ることができます。現在も天然乾燥による製品加工は行っております。

水は飲料用ではなく、ほとんどが気化してしまうので、飲料水のように味には特にこだわりません。しいて言えば、気化時に残留物がなければ良いですね。

阿 部:塙町で木材加工という事に関して、地域性は関連があるのでしょうか?

社 長:塙町は山村で、全国的に有名な杉が多く、特に八溝山系は、豊かな美林の宝庫です。関東地方ではかなり名の知れた木材の産地です。そのため、林業が盛んな町です。

阿 部:環境保全活動など、何か独自に取り組まれていらっしゃいますか?

社 長:私どもは、きれいな水や空気は森で作られるものだと考えています。
 自然の産物である木を伐採・植林するという行為自体が環境を保全する活動であると思います。移転前の工場ではボイラーの燃料として重油を使用していましたが、現在は月に7〜800m3ほど出る木材チップやバーク(皮)などの廃棄物を燃料に換えてまかなっています。おかげさまで効率は大変良く、環境に負担をかけずにエネルギーが手に入ります。薬剤も使用していないため、流れ出る排水も汚染の心配はありません。チップは他にも製紙工場に譲るなど、木材は『余るところ』がありません。


こちらが協和木材さんで使われている軟水装置『イオンソフナー』です。

こちらが同じく協和木材さんで使われている逆浸透膜処理装置『RO』です。

○取材を終えて…○

 『余るところがない』という答えに強い衝撃を受けました。木も自然から生まれたもので、自然に帰っていく…社長の穏やかでいて芯の通ったお話に感銘を受けました。
 大きな工場で、扱うのは木材のみというシンプルな事業内容の中に、製品の品質に対する大きな誇りと自信が溢れていました。住宅資材をはじめ、欧米からの木材が多く輸入されていますが、自分の生まれた国の自然で作られた産物を大事にしていきたいものですね。

新協地水と協和木材さんとの
○水のかかわり○ 

 社長のお話の中で、『スチーム乾燥』という言葉が出てきました。木材に対して、スチーム(蒸気)の水質は影響が少ないようですが、スチームを作るためには、ボイラーは不可欠です。
 そこで問題となるのが、そのボイラーに良好な水質が限られていることです。ボイラーの種類や使用条件によってそれぞれ違いはありますが、一般的に良好な水質とは、(1)硬度(カルシウム・マグネシウム等)が低いこと、(2)塩化物イオン濃度が低いこと、(3)電気伝導率が低いこと、(4)pHが適度なアルカリ傾向であること、が求められます。
 新協地水では、協和木材さんの新工場建設以前から、地下水調査の実施、地下水の利用目的や水質改善などの提案・検討を行っておりました。実際の井戸築造も当社で行いました。そこで、ボイラーにとって良好な水質にするために、水処理装置 “イオンソフナー”(軟水装置)の設置を提案しました。“イオンソフナー”を使用することで、水の硬度を1以下に処理。また、“逆浸透膜処理装置”を使用し、その他の含有成分を除去することで概ね純水に処理することができ、ボイラーに適する水にしました。
 “逆浸透膜処理装置”…名称を見ると高額な装置とお思いでしょうが、ボイラーの使用条件等をしっかり把握することで、適切な機種を選定し、コスト軽減を可能にしました。また、ボイラーの効率も良く、安定しているので、ランニング・メンテナンスコストも抑えられています。さらに、配管設備や電気回路が少ないので、日常点検も容易に行うことができます。工場業務を安心して行っていただくために、この水と処理装置が協和木材さんの事業を支える縁の下の力になっていると考えております。


※ 新協地水(株) 技術部



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