シリーズ『水へのこだわり』(VOL.3)
株式会社 佐川

阿部 睦美※

 昨年度の第49号からスタートした『水へのこだわり』シリーズも今号で第3回目をむかえました。『土と水』は、当社の業務に関連した、かなり専門的な内容も含まれる季刊誌でありながら、さまざまな職種の方々、広い年齢層の方々にご覧いただいております。それを励みにしながら私、毎号変わらぬ緊張感と期待感を持って取材させていただいております。取材にご協力いただいている企業の方々、快く対応してくださり、ありがとうございます。多くの質問に分かり易くお答えいただき・・・写真撮影も許可していただき・・・あとは私自身の文章・編集力のスパイスでなんとかよりよいシリーズにしていかなければ!

こちらは磐梯山工場です。見学当日は雪模様でした。高原の中にあり、空気が澄んでいて、自ずときれいな水と氷が連想されます。

〜株式会社 佐川 本社へ〜

 福島県郡山市近辺にお住まいやお勤めの方、土地勘のある方なら一度はご覧になったことのある看板ではないでしょうか。郡山市を横断する国道49号線を、いわき方面に車を走らせます。郡山警察署を右手に通過し、東北本線をまたぐ跨線橋『安積大橋』を渡ってすぐ右手の橋のふもとに株式会社 佐川 本社の建物が視とめられます。
 今回は、こちらの事務所にお邪魔しまして、株式会社佐川2代目であられる佐川社長、磐梯山製氷工場の飯島工場長にお話を伺いました。

〜佐川の歴史〜


こちらが佐川社長氷と水に対する熱意に、圧倒されてしまいました。

 現在の佐川社長のお父様の代まで郡山市内で鮮魚店をきりもりなさっていましたが、鮮魚とともに扱っていた氷に着眼され、角氷メーカーである『佐川製氷冷蔵』として昭和34年にスタートしました。製氷業者には、角氷を保管しておく貯氷庫が必要不可欠なため、貯氷庫を保有していたところ、食品メーカーから『倉庫内に余裕があるのであれば、うちの商品を倉庫にストックさせてもらえないか』という要請があり、冷蔵倉庫業も開始することになりました。
 現在は郡山市深田台の本社事務所に隣接して、深田台製氷工場・冷凍倉庫・低温倉庫があります。また、磐梯町の磐梯山製氷工場ほか福島市内と郡山市内に冷凍倉庫と販売所を構えています。
 事業内容としましては、食品としての家庭用・業務用氷製造・販売の製氷業、主に食品の冷凍保存として活躍している冷蔵倉庫業、また主に食品(アイスクリーム・冷凍食品・水産など)宅配の保冷、保存輸送用として17年ほど前からドライアイスの販売も行っています。
 『磐梯西山麓湧水群』は環境庁認定名水百選のひとつです。そのような名水の地である磐梯山に良質で美味しい水を求めて磐梯山工場が造られました。そこで造られる『クリスタルアイス』は、銘水から造られるブランド的銘氷として消費者に好評を持たれています。


今回の取材の様子。左手奥から佐川社長、飯島工場長。
右手が当シリーズ担当の阿部。

質問者:阿部(以下『阿部』)
最初に佐川さんの現在までの歴史ということで、お話を伺いましたが『倉庫業』について、単純に大きな冷蔵庫を連想してしまいましたが。

お話:佐川社長(以下『社長』)
そうお思いになる方が多いと思いますが、実際はビル1棟がまるまる冷蔵庫になっていると考えていただいたほうが適切であると思います。普段の生活を考えていただいても、『冷凍』はかなり身近ですよね。食品に関して言えば、ほとんどが冷凍に関わっていると思います。おそらく冷凍されていたものと分からないで口にしている方もいると思います。冷凍倉庫はなくてはならない存在になりましたね。郡山市内で言えば、倉庫業を行っているのは佐川をはじめ、数少ないです。海や山で採れた新鮮な食材を消費者に提供する意味で、冷凍倉庫は『食品のダム』であると言えるのではないでしょうか。

阿部:佐川さんの業務内容の中では、製氷業が大きな割合を占めていらっしゃると思います。製品にはどのようなものがありますか?

社長:ほとんど全てが食品としての氷製品として出荷されています。お酒や冷たい飲み物を飲む時に入れて冷やすものとして、袋状のパック、もしくは角状の容器に入って販売されているかちわり氷。また、キャンプなどのアウトドア的なレジャーの保冷用(クーラーボックス内)によく使われている板状の氷がメインになりますね。ほかには少数ですが、鮮魚の保冷用として、漁港のある地方にも出荷されるときがあります。獲れた魚などを港まで運んでくるのに、大量の氷を漁船に積んでいく必要があるからです。

阿部:食用と保冷用の製品とでは、製造方法に違いはありますか?

社長:製造方法および原料つまり水に違いはありません。

阿部:一日の平均出荷量はどのくらいですか?

社長:年間を通しますと、出荷量の4割が夏場に集中します。多忙期には交代制で夜間も稼働しています。平均しますと、磐梯山工場と深田台工場を併せて一日約90tの製品を作っています。

阿部:氷を製造する上で、最も気をつけるところはどこですか?

社長:一番気をつけなければいけないのは、製氷工程、包装段階での異物混入です。製造する中で気を使うのは、氷の透明度ですね。みなさんが普段目にしておられる、一般家庭の冷凍庫で作られる氷は凍る過程でどうしても気泡が混じってしまい、白くなってしまいます。それでは飲み物に入れたときに美しさがありませんよね。

阿部:その透明度を出すために、どのような処理がなされているのか、非常に気になります!

飯島 磐梯山工場長(以下『工場長』):では磐梯山工場内をご案内いたします。何か聞きたいことがありましたらどうぞ。


〜磐梯山工場へ〜

場所を移動しまして、磐梯山工場にお邪魔しました。さっそく工場見学です!

阿部:氷の工場というだけあって、白を基調としたとても清潔感のある工場ですね!


磐梯山工場を案内してくださった飯島工場長。
磐梯山工場の建物は工場長みずから設計されたそうです。

工場長:実は工場を設計したのは私なんです。工場内の機械を設計したのは佐川社長なんですよ。

阿部:それはすごいですね!設計まで携わるとは。では、具体的に製品が出来上がるまでの過程を教えていただけますでしょうか?

工場長:わが社では、水処理をすることで、汲み上げた水の中のマンガンなどの不純物を取り除き軟水化させ、製氷缶へ注いでいます。不純物を取り除いた状態でも、水の中には空気が溶け込んでいます。氷になるときに、その空気が気泡になってしまい、氷の中心部が白くなってしまうのです。そこで、常にエアーを送り続けることで、水を撹拌し、気泡で白くならない透明な氷を作ることが出来るのです。氷の出来上がりまでは24時間。かちわり氷と板氷とでは、ここからの工程が異なるだけで、製氷方法自体は一緒です。かちわり氷の場合は出来た氷を砕氷機で砕き、形・大きさを選別し、包装となります。

阿部:イオン交換させることで不純物を除去させているんですね。そのために軟水になると。ところで、製品はどこへ出荷されるのですか?

工場長:ほとんどが東北、関東方面のスーパーマーケット、コンビニエンスストア、市場、氷店。最近増加傾向にある、食品を扱っているホームセンターやドラッグストアでも販売されています。日本全土に営業の手を広げようとしても、氷は遠方になればなるほど輸送面などでのコストの問題があります。美味しく質の良い氷を低価格で提供することがわが社のモットーです。

阿部:取材にご協力いただきありがとうございました。


○取材を終えて…○

 工場内を見学して一番感じたことが『シンプルに対する追求』でしょうか。
 『氷は透明で美しいから故に、手を抜けない』という工場長のお話。
 お酒をロックで飲む時にグラスにかちわり氷を入れる。氷はどちらかというと脇役で、飲み物の味を邪魔してはならない。だが、グラスの中の氷の美しさと溶け出した時の美味さは、主役の飲み物の存在価値を左右するほどの力がある。
 今回お話を伺った佐川社長、飯島工場長の製氷業のプロの方々は、佐川さんで造られる氷のように、
 製氷に対する硬く澄んだ熱意をお持ちだと強く感じました。


※ 新協地水(株) 技術部



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