特集 アルファウイングパイル事業への 当社の取り組みについて
代表取締役社長 佐藤正基

1. 開発経緯とパートナーリング構築

1999年以降の建設崩壊と呼ばれる時代に、東北地方の建設関連業として生き残りをかけるため、「回転埋設鋼管杭事業」を2000年10月から新事業として手掛けてまいりました。この時期は、回転埋設鋼管杭の黎明期に当り、2000年〜2002年の3年間は全社の売上の約25%を占め、我社の「売れる商品」のひとつとして、積極的に広域化をして販売・施工を行ってまいりました。しかし、2003年以降、新たに開発された埋設鋼管杭との1本当りの支持力,そして価格的な競争に巻き込まれることになり、見積りの依頼があってもなかなか受注に至らないケースが徐々に増えていきました。このような厳しい状況を受け、パテント費用が経営を圧迫し、この事業から完全に撤退をすることを決断せざるを得ませんでした。しかし、黎明期だからこそ生き残り、市場に普及する商品を開発すれば確実に利益確保に貢献するという自信を深めていたことも事実です。このことから、2004年10月に全社をあげて新協地水のブランドとして,さらには次の主力商品として、新しい回転埋設鋼管杭を開発する決定をしました。
 事業主体となる(株)アイビーピーを2005年4月に設立し、2007年8月まで国土交通省の性能評価認証機関による鋼構造委員会・性能評価委員会を経てきました。鋼構造評定取得・性能評価取得が完了したことを受けて、国土交通大臣への認定手続きを開始する予定です。

2.回転埋設鋼管杭事業への取り組み

 2006年11月発行の「基礎工」は回転貫入杭の特集でした。編集趣旨として『同工法は古くからありますが、低騒音・低振動であるとともに、杭を設置するとき土を排出しないこと、小径から大径まで各種の工法が開発され、構造物の規模を問わず応用範囲が広いことなどから、最近、施工事例を増やしています。』(抜粋)と記載され、最近の工法と適用事例について紹介をしています。さらに、『ねじ込み杭の思い出』と題された海野博士の巻頭言の結語として、「最後に低公害工法で都市部での施工にも適合するなどの特徴を生かして、この工法の益々の発展を願うところである。」と強調されています。
 新しい基礎工法として、我々はアルファウイングパイルの特徴を生かして、2006年10月以降自主的地盤補強として既に1200本以上の施工実績を積上げてまいりました。先端部を鋳鋼で製造し大量に供給できる体制を確立し、低公害工法で狭小地(写真-機械基礎として屋内施工)でも施工が可能そして何よりも支持地盤にスムーズに貫入することができるアルファウイングパイルの施工に大きな自信を持って2008年以降本格的に事業に取り組む予定です。
 我社は、新潟を含む東北地区の中核代理店そして関東地区の中核代理店である首都圏基礎対策事業共同組合の一員として、代理店を展開し、杭材(杭体と先端を溶接した杭材および関連付属品)を販売する予定です。さらに、事業の広域化に伴い我社が行っている地盤調査・さく井・井戸メンテナンス・特殊土木についても積極的に取り組む考えです。
 我社は、アルファウイングパイルを開発するため厳しい経営環境の中、この4年間に多くの労力と資金を注ぎこんできました。耐震偽装問題・中国製品の品質問題・大臣認定工法の試験データー偽造問題など、食や住の安全に関わる不祥事が連続して発生した影響をまともに受け、性能評価の遅れそして予算を超える費用の発生に苦しめられてきました。性能評価が得られたというだけで、アルファウイングパイル事業の順風満帆な船出が保証されるわけではありませんが、新しい事業を展開する出発点に立つことができると信じています。我社のこの事業を大きく展開することができれば収益に大きく貢献するだけでなく、地域を拡大してさまざまな事業展開への夢が広がることを祈念をしてアルファウイングパイル事業を展開していく所存です。


【α Wing Pile Point】
高さ制限のある、低い天井の建物内でも施工可能


【α Wing Pile Point】
歩道など、狭小地でもバックホウが自走可能なスペースがあれば施工可能


建築基準法改正後の安全性を確保できる
最新の回転埋設式鋼管杭(アルファウイングパイル)の性能と機能について

工学博士・技術士(建設/土質と基礎)小松田 精吉

 平成19年6月20日、建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部が改正され施行されました。アルファウイングパイルは、性能評価を取得するための技術的な審査が10月に終了しました。性能を評価する委員からも改正された建築基準法に対応できる新しい回転式鋼管杭の性能が求められました。私たちが開発した回転埋設鋼管杭「アルファウイングパイル工法」は従前の回転埋設鋼管杭工法と比較して次のような性能と機能を持つ優れた杭と評価していただきました。

  1. N値30以上の地層でも一定の貫入で埋設され施工時間が早い。(評価委員立会いで砂質地盤N値45〜52程度の地層3mを4分程度で貫入した。)
  2. 硬い地層でも回転抵抗が大きくなるだけで、押込みの力をあまり必要としない。
  3. 先端部は刃先と翼部が一体に成形されているが、埋設後、先端部を回収した結果変形はまったく無かった。先端部の製造管理についてはJIS Q 1000(適合性評価−製品規格への自己適合宣言指針)による製品管理マニュアルを作成し第三者による評価をしていただいた。(評定書は最終ページに写真掲載)

 このように、法改正を前提にした審査であるため、従前の鋼管杭には求められていない諸条件を満たすべく、各種の試験や実験が要求されました。アルファウイングパイルは、これらの要求のすべてに応えて合格した製品です。
 杭基礎は建物の極めて重要な構造体の一部です。設計者が設計書に記載した杭長が、施工の段階で増減すると、設計変更の対象となり、確認申請を再提出しなければなりません。これによって生じる工期の遅れに伴うさまざまなリスクは想像以上のものになることでしょう。性能評価委員会でもこのことが話題になりました。このため、確実に設計どおりの支持層に杭が達することが必要条件であり、そのためにも杭の打ち止め管理方法が重要となります。アルファウイングパイルは、打ち止め管理方法についても高く評価されました。
 アルファウイングパイルは、建築基準法改正後に技術性能評価を得た新しい回転埋設鋼管杭工法です。そういう意味では、新時代に相応した全く新しい杭工法であると考えます。多くの皆さんにご多用されるよう推奨するものです。


アルファウイングパイル施工見学会報告

役員室 鈴木 麻里子


見学会当日

福島県建設工業新聞掲載記事(2007.9.7)

 前回の土と水50号でご報告しました、EE東北(国土交通省主催の技術展示会)参加から3ヵ月後の2007年8月29日(水)、新協地水(株)西部事務所駐車場(福島県郡山市片平町)にてアルファウイングパイル施工見学会を開催しました。見学会アシスタントとして参加した私からで恐縮ですが、見学会の様子をご報告させていただきます。
 見学会の参加者は全33社、69名となり、厳しい暑さの残るなか見学会場は参加者でいっぱいになりました。EE東北へご来場くださったお客様も見学会へ参加していただきました。

 当社の佐藤社長と「アルファウイングパイル」の開発者であるアイビーピー菅野社長からご挨拶とアルファウイングパイルについての特徴の説明がありました。

 施工は、工事部の高山課長、深谷主任、相原さんがスタンバイし専用機“マルスドライバー”にアルファウイングパイルが固定され、いよいよ施工状況の披露です。
 専用機“マルスドライバー”による施工は、施工中のトルク値、押込み力、鉛直管理をしながら杭を回転させることにより埋設するためスムーズに地中に入り、施工による廃土は全くありません。全長12m(6m×2本)の杭はみるみるうちに地中に貫入していきました。(1回転あたり10cmから15cmの施工埋設速度で貫入しました。)

 施工状況を見学した参加者からは、施工中の振動や騒音が少ないことやN値30程度の地層でも一定な貫入速度で埋設するため驚きの声が聞こえました。アルファウイングパイルの特徴にも挙げている『施工性の良さ・低振動・低騒音・無廃土』が認知されたと感じ大変うれしくなりました。
 施工中は基礎対策事業部の大内部長代理が施工状況を説明し、新協地水とアイビーピー社員は、参加者からの質問対応に必死の状況でした。約2時間、施工見学会は無事終了をむかえました。
 たくさんのお客様にご参加いただき誠にありがとうございました。



施工時の状況2

施工時の廃出土杭の周りに若干盛り上がった土です。

先端部の製造管理についてはJIS Q 1000(適合性評価-製品規格への自己適合宣言指針)による製品管理マニュアルを作成し(財)ベターリビングに評価をしていただきました。

アルファウイングパイルについての簡単な商品説明DVDをご用意しておりますので、御入用の際は弊社までご連絡ください。

 



[前ページへ] [次ページへ]