二十数年前、私が始めて地下水処理を計画したころ、除鉄・除マンガンの主流は、接触酸化法を用いた濾過で、現在でも主流であると思われます。 これは、イオンとして存在する2価の鉄・マンガンを酸化させて、3価の“もの”に変化させます。その“もの”は形ある粒子として、濾床に捕捉され、逆洗によって系外に排出されます。この濾材は、酸化反応を加速させる触媒の役割を果たすものが多く、また次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化助剤を濾過搭前に注入させるものです。
このころ、海外の濾材で、酸化助剤を必要とせず、運転流速も従来品より速くできるものを使いました。事前の短期テストでその能力を確認し、自信を持って装置納入しましたが、数ヵ月後に問題が起こりました。検証したところ、逆洗不良による処理水質の悪化 というあたりまえの結果となりました。これは、濾材メーカーからの明確な指針がないため、逆洗流量を従来品と同等のLV=35 程度に設計したためです。検証中に必要逆洗流量は、LV=60 程度とわかりましたが、逆洗ポンプ能力、処理水タンクの容量から、簡易の改造では対応できず、従来濾材の濾過塔2塔並列交互逆洗に入れ替えました。 売り上げの3倍のコストをかけて、逆洗・展開の重要性を学びました。 その後、他社で納入した装置での、マンガン除去が十分ではなく、後段処理を依頼され、イオン交換樹脂をテストしたところ、安定的にマンガンを除去できる結果が得られました。 前段で次亜塩素酸ナトリウムを注入すると、イオン交換樹脂を破壊してしまうため、エア酸化用の濾材に交換し、直列2塔処理で鉄・マンガン共に除去しています。 この原水は、硬度が低かったので樹脂再生用の塩(NaCl)の消費も低く抑えられました。 イオン交換は、低濃度に処理するためには、接触酸化より有効ですが、再生用塩の消費でランニングコストが問題になります。原水の鉄、マンガン、硬度の濃度を考慮しながら、処理方法を選択して細部の検討をするべきであると考えています。 現在、海外のイオン交換樹脂メーカーで開発されたものに、球状樹脂の接触酸化濾材があります。これは、酸化助剤を必要としない強い触媒性能を持ち、また、球状(ビーズ)であるため逆洗展開もスムーズ、破砕体よりも濾過性能に優れています。 従来濾材でなかなかうまくいかないところでこれに濾材を変えて安定した処理になったという実績も増えているようです。 弊社でも、この濾材を検討し、また、コロイド鉄の吸着剤、ppbレベルの処理を目的としたキレート樹脂も合わせてご提案させていただけるように努力していきます。 以上
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