特集 新工法 新しい回転埋設鋼管杭 α Wing Pile
※ 佐藤 正基

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1.はじめに

 弊社を含む7社は、小規模建築物を対象とした先端翼付き鋼管を用いた杭状地盤補強工法「Σ-i工法」の開発を進め、本年8月3日付で(財)日本建築総合試験所の建築技術性能証明(CBRC 性能証明 第10-13号)を取得しました。開発会社7社のうち弊社を除く6社は、次の各社です。「株式会社 設計室ソイル様(東京都),アキュテック株式会社様(石川県),応用開発株式会社様(愛知県),キューキ工業株式会社様(宮崎県),ジオテック株式会社(東京都),地研テクノ株式会社様(神奈川県)」今後、開発会社、指定施工会社、先端翼販売会社より構成される「(仮称)Σ-i工法協会」を創設して本工法の健全なる普及展開を目指してまいります。
 本文ではΣ-i工法の市場投入に当たり、戸建住宅基礎の現状を把握し、現在戸建住宅基礎補強として実施されている工法を知り、Σ-i工法の優位点を探るものです。
 欠陥住宅相談の上位にある、「亀裂」や「傾斜」は住宅そのものと、それを支える地盤が適切な強度を有していない場合が多く、欠陥の多くは地盤に起因をしている場合が多いと言われています。地盤に起因する欠陥がなぜ多いのかを考えてみると、土地価格の高騰と住宅の需要が増加したことで、水田や沼地などの盛土や斜面などを切り開いて宅地開発が増加をしたことが原因です。この結果、適切な造成となっていない住宅地は、住宅構造そのものに被害をもたらすことになっていったようです。このような欠陥地盤の代表例としては、
 (1)住宅にふさわしくない軟弱地盤
 (2)造成時の盛土施工の不良,盛土材の不良
 (3)擁壁および盛土施工の不良
 (4)排水計画の不良
   などがあげられ、様々な地域で住宅欠陥をめぐる訴訟の要因となっています。

2.戸建住宅基礎の現状と対策

 阪神淡路大震災の被災経験から平成12年に住宅の品確法の施工と建築基準法が改正されました。この改正によって基礎の設計に関する基準が示され、地盤の長期許容応力度に対する基礎断面が示されることになりました。

 適切な造成となっていない住宅地では、基礎の役割で最も重要な沈下防止について布基礎やベタ基礎のみで対応することが難しく、不同沈下の発生原因となっています。
 現在、わが国の戸建住宅の年間着工件数は約50万戸であり、このうちの約2割に当たる約10万戸は、最大の保証機関である(財)住宅保証機構の登録住宅となっています。2002年度に同機構で取りまとめられた住宅各部位の保証状況と保証金額を以下に示します。

○基礎に関わる保証件数は約2割ですが保証金額では約6割を占め、1件当たり530万円相当の支払いが生じています。他の部位の補償額と比較をすると非常に多額の支払いが発生していることがわかります。
次に、基礎に関わる支払い件数および支払い金の占める割合の推移を示すと、図-3のようになります。

○不同沈下の発生に伴い、保証事故件数は8年で12.6倍に急増しており、そのうち基礎部の保証事故件数は14.8倍となっていますが、事故件数は2003年の21.3%をピークに減少傾向にあります。

○2004年以降の基礎部事故比率低下は、沈下防止のための地盤補強方法が主流となりつつあることを裏付けている推定されますが、それでも基礎部事故に対する保証額の支払い比率は、5割を超えています。

したがって、欠陥住宅の大きな要因となる地盤の安全をさらに正確に評価をし適切な基礎工法を選択して、損害率をできるだけゼロに近づけることが住宅供給者の信頼確保のため課題となってきます。このような状況から、今後戸建住宅の地盤補強はますます増加すると予測されます。



3.地盤補強方法について

 地盤調査の結果、建物荷重に対する地盤の地耐力(即時沈下や圧密等の地盤変形も含む)が不足すると判定された場合には、地盤改良・補強工法を施すことになります。戸建住宅基礎に用いられる地盤改良の主な原理は、
 (1)締固め(緩い土を締め固める)
 (2)置換え(強い材料と入れ換える)
 (3)固結(化学的に土を固める)
 (4)荷重分担(杭等で深い地盤に荷重を分担させる)
の4つがあげられます。
 地盤補強方法を大きく分類すると図-4のようになります。
 以下、平面地盤補強および杭状地盤補強の概要について述べると、

平面地盤補強
 基礎底面から深さ2.0m程度までを平面的に連続して地盤補強する工法であり、置換え,浅層締固め,浅層混合処理工法があります。

杭状地盤補強
 基礎底面下の地盤を杭上に深さ方向に連続して地盤補強する工法であり、深層混合処理,小口径杭工法(鋼管杭,PC杭,木杭)があり、従来の基礎工法で不同沈下を抑制できない場合は、杭体と直接基礎を併用するパイルドラフト基礎を採用することもあります。

 平面および杭状地盤補強として原理をまとめ整理すると、下表のようになります。

○上位の工法ほど安価で採用実績も多く、1から5にいたる順序で従来の基礎地業の欠陥を克服するために開発されたものであり、関東以西については耐震補強に関する認識が高く、4および5の地盤補強が増加をしています。

4.Σ-i工法とは

 Σ-i工法とは、アルファウイングパイルの開発ノウハウを弊社が提供し、開発会社となる7社が共同で開発を行った、杭状地盤補強工法です。アルファ同様先端に4枚の掘削刃とスパイラル状の翼部が取り付けられた杭を、地盤中に回転しながら貫入する工法です。特徴を要約すると次のようにまとめられます。

(1)確実な支持力
 杭先端に取り付けられた翼部は、直径が鋼管軸径の2.5〜3倍であるため、大きな先端支持力を得ることができます。
(2)あらゆる地盤に対応
 砂質土地盤・礫質土地盤・粘性土地盤などあらゆる地盤に対応する、汎用性の高い地盤補強方法です。
(3)環境への配慮
 回転貫入施工のため振動・騒音を極力抑制するとともに、施工による排出土が発生しません。
(4)高い施工性能
 4枚の掘削刃と一体化されたスパイラル状の翼部は、硬い支持層地盤にも容易に貫入することができます。
(5)一貫した管理体制
 「設計・施工管理技術者」による設計および施工管理の体制を確立。また、先端翼部は信頼性確保のため、全て通し番号によるロット管理を実施します。
(6)信頼の性能
 Σ-i工法の信頼ある性能は、日本総合試験所「建築技術性能証明」の取得により確認されています。
(7)狭小地への対応
 先端翼の形状により貫入推進力が高く、小型の施工機械が使用でき、狭小地や隣接環境に左右されずに施工が可能です。
○適用構造物
 下記の(1)〜(4)の条件を全て満たす建築物および見高さ3.5m以下の擁壁
 (1)地上3階建て以下  (3)軒高さ9m以下 
 (2)建築物高さ13m以下 (4)延床面積5000m2以下

○最大施工深さ
 杭状地盤補強の最大施工深さは、施工地盤面より130D(杭体の直径)以下。また、スウェーデン式サウンディング試験による最大施工深さは、15.0m以浅を標準とします。ただし、自沈層など軟弱層が続き、15.0m以深でも調査が可能な場合は適用できるとしています。

 杭状補強材の仕様および最大深度および支持力を表−2,3に示します。

 Σ-i工法は、アルファウイングパイル同様貫入速度が早く、小規模建築物相当の支持層(N値15〜20)に達しても速度が大きく低下することなく貫入させることが出来ます。先端翼製造に関する技術そして施工性に優れた工法であることが、それぞれの開発会社に認められものと考えています。このように、Σ-i工法は、小口径鋼管杭に必要な全ての要素を集大成した工法です。この開発の基になったアルファウイングパイルは、弊社が事業主体となる(株)アイビーピーを設立し、2008年5月に国土交通大臣認定を取得した回転埋設鋼管杭です。Σ-i工法は、アルファウイングパイル事業の延長と捉え、工法開発会社として住宅産業に地盤補強工事会社として参入し安価で安心できる杭状地盤補強工法を市場に提供していかなければならないと考えています。
 今後とも、「新協地水3つの理念」に基づき、社会に貢献する会社を目指してまいりますので、よろしくお願いをいたします。



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