定期的に月に数度、仙台に打合せ等で行くようになりほぼ10年が経過をしました。郡山から東北自動車道で北へ、県境の国見を過ぎ白石市内に入ると西側に大きな障壁の様な山塊が現れてきます。この山塊は、蔵王連峰を構成する、不忘山(1,705m),南屏風岳(1,810m),屏風岳(1,825m)であり、残雪そして紅葉といった障壁が作る様々な四季折々の風景が運転疲れを癒してくれます。蔵王は、宮城県と山形県の県境南部に位置する火山の集合体であり、北は雁戸山から南は不忘山までの約25?の連峰です。蔵王という名称は、修験の場として山々の総称であり「蔵王権現」を祀ったことに由来をするもので、蔵王という名のピークは存在せず、北蔵王,中央蔵王,南蔵王という区分で呼ばれています。お釜を要する中央蔵王は、刈田岳山頂直下まで観光道路が開かれ南東北有数の山岳観光地として一年を通して賑わっていますが、エコーライン以南の南蔵王は登山者の世界となっており、刈田岳から不忘山を縦走する「南蔵王縦走コース」が整備されています。
ここ数年は、年間を通した山行計画に5月は後烏帽子岳から見る残雪、そして10月は不忘山から南屏風岳を縦走しての紅葉狩りを楽しんでいます。2010年秋は、早々に予定が詰まってしまい、例年の紅葉狩り縦走が出来そうにありません。今回は、この夏の酷暑からひと時の涼を求めて8月29日に、みやぎ蔵王白石スキー場を起点として不忘山〜南屏風岳そして水引入道を周回するコースの山行を紹介します。
念願だった夏の不忘山そして南屏風岳へ縦走を計画。心がはずみ久しぶりに5時前に起床をして高速道路で白石へ、登山口となる「みやぎ蔵王白石スキー場」には、7時10頃に到着をする。すでに7〜8台が駐車、2パーティーがスタート直前だった。天気は予報どおり快晴で、はやる気持ちを抑えながらの身支度となる。駐車場の標高が約843mであるため、南屏風岳までの比高は967mとなる。相棒は調子がすこぶる良さそうで、先にスタートして「登山届けを提出しているから」と、いつも私にまかせっきりの相棒の行動にびっくりしながらも7時23分にスタートする。先ずは、緩やかなゲレンデ内の踏み跡を行くと、ほどなくスキー場内の整備用林道を歩くことになる。道標にしたがって進むと、27分で旧白石女子高小屋跡の広場に出る。ここから樹林帯の登山道で緩やかに高度を上げていく、やがて小沢を渡り傾斜も徐々にきつくなると登山道の土質は腐葉土からローム質に変化し溝状の路となる。滑らないよう足元に十分に注意をしながらも、慎重に登ると1時間20分で「弘法清水」に着くが、未だに清水の場所は分からない。道標には、「不忘山まで後1.5km」と、ここから不忘山へは直登となるため、バナナと梅干といった行動食と水分を補給して、気合を入れて前へ前へと進む。斜面の途中で腰を降ろして休んでいたグループに挨拶、そして互いに励ましの言葉を交わしながら、さらに一歩一歩高みを目指す。以前は、雨水等の流れにより道は深く抉れた状態であり、水分を含んだローム質の路面は大変滑りやすい悪路であったが、土砂流失防止用の簡易柵が等間隔で設けられ大変歩きやすくなっていた。それでも、暑さと日ごろの不摂生がたたり足取りは予想以上に重く、体調の良い相棒との間隔はドンドンひらくばかり。まったく気遣いもせず先に歩を進める相棒の小さくなった背中を追いながらも、傾斜のきつい地形に踏ん張って自生し大きく湾曲している幹の間から、今登ってきた道を振り返ると東側には雲海が広がっており、展望への期待が体を大きく押し上げてくれる。さらに高く遠くに「不忘の碑」の大きな石碑が確認できると、山頂が確実に近づいていることに胸が高まる。高度とともに気温もドンドン上昇しついに28℃、額から大粒の汗が滝のようにほとばしり、肉体的そして精神的にも限界に近づきつつあるそんな状態を感じながら踏ん張ると樹林帯から開けた標高1550m付近のガレ場となる。ガレ場を過ぎると、トリカブト,リンドウなどの夏の花々が咲きほこり、まもなく硯石からの登山道と合流し、「不忘の碑」が迎えてくれる。不忘の碑は、第二次世界大戦中に墜落したアメリカ軍機の搭乗員を慰霊する石碑で、ここで休憩をしていた相棒と合流し不忘の頂を目指す。ここから先の登山道は大きな石がゴロゴロしている上に、日差しをさえぎる樹木がないため、クラクラ目眩がするほどの暑さとなっている。しかし、時折吹く西側からの涼風に励まされながら、2時間20分で山頂に到達する。山頂からの展望は、期待をはるかに越え360度の大展望となっている。北西側にはこれから登る南屏風岳そして北側には水引入道が聳えている。南屏風岳から続々と登山者がこの頂を目指して来る、ここが最終目的地でない我々は早々と最展望地を次の登山者に空け南屏風岳を目指す。
南屏風岳への登山道はヤセ尾根沿いに一旦高度を落とすものの、ここからは雲上のお花畑になっており、春から秋にかけて登山者を魅了する花々が咲きほこっている。今は、夏真っ盛り赤紫のハクサンフウロそしてトリカブトなど、展望もさることながら色とりどりの花々に目を奪われると、仕事のことも忘れ「ホット」安らぎを体感する。ヤセ尾根上の狭い登山道では反対側から来た登山者と上手く道を譲り合いながら、そして言葉を交わしながら最後の鎖場を登りきると、平坦な地形となり南屏風岳の山頂に至る。不忘山から37分,スタートから3時間の道のりであった。大きな岩がゴロゴロした山頂で360度の展望が得られることから、北からの登山者と南からの登山者の休憩地点として賑わっていた。まだ時間的には10時30分と早いものの、久しぶりに早朝から行動していたためゆっくり休むことに。気温は、依然として高いが吹く風は秋風、上着を着込みゆっくり温かいうどんを作って空腹を満たす。遠く北側の蔵王エコーラインは、8月最後の日曜日であるがまだまだ暑い日々が続いているだけあって涼を求めて大渋滞気味。山頂でのほっとしたひと時に、山から勇気と活力をもらい約56分休んで、次のピークとなる水引入道を目指す。屏風岳手前の分岐まで25分、ここで素晴らしい尾根歩きは終了となり、ここからは屏風岳の東側斜面をジェットコースター並みに一気に約180m下降する。どこが鞍部といった具合に斜面を転げ落ち水引平へ、一つだけある小さな地塘が緊張した体をほぐしてくれる。登り返して水引入道へ、今歩いてきた縦走路はすでにガスの中、シルエットとして確認できるだけ、疲れた体をほぐしながら緩やかな下山路となるジャンボリーコースをのんびりとスタート地点の駐車場へ。
(南屏風岳まで3時間,ジャンボリーコース経由2時間51分)

『秋の水引平から南屏風岳への稜線を望む』
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