1.はじめに
福島県中通りの中央付近に位置する須賀川市は,東日本大震災で震度6強を観測し、多くの建築物や土木構造物が被害を受けた都市の一つである。
現在、須賀川市では倒壊した建築物等の瓦礫を郊外の敷地に仮置き中であるが、市街地の瓦礫撤去が進むにつれ、仮置き場の瓦礫が増加している状態であり、その再利用の方法について模索中である。
特に福島県では、震災瓦礫の県外搬出が制限されているため、それらの現地処理は不可欠であり、その一環として、瓦礫を建設材料として再利用できれば有効である。
筆者らは震災瓦礫の埋め戻し材を主とした地盤材料としての再利用を背景に、その基礎的な工学的性質把握のために、物理特性、安定特性および締固め特性に関する試験を行った。
本文では結果と再利用の可能性について報告する。
2.対象とした瓦礫と試験方法
(1)対象とした瓦礫
須賀川市では、東日本大震災で倒壊した建物等の瓦礫や危険と判断されたために取り壊された建物等から発生した瓦礫を、コンクリート片、瓦片、大谷石片、木片等の可燃物等に分類し、市の東部地域に仮置きしている。
表-1に対象とした瓦礫とその特徴を示す。
(2)試料の準備と実施した室内試験
仮置き場からコンクリート破砕材、瓦破砕材、大谷石塀破砕材をそれぞれ土嚢袋に採取し、室内にて37.5mmでふるい分けした後、四分法で粒度調整を行い、試験に供した。
試験は、埋戻し材等の建設材料としての適否1)を判断するため、土粒子の密度、粒度、液性限界・塑性限界の各物理試験、乾湿繰り返し吸水率、スレーキング、すりへりの安定試験、締固め特性を把握するために締固め試験を行った。なお、締固め試験について、一部の試料でオーバーコンパクションが懸念されたので、試験後の粒度試験を追加実施した。
3.試験結果
(1)物理・安定特性
物理試験結果を表-2に示す。物理特性では、いずれも礫質土(G)に分類される。大谷石破砕材は、凝灰岩の特性上、密度が軽く、細粒分がやや多い。
安定特性結果を表-3に示す。安定特性では、いずれも基準値(NEXCO基準1))以下で、劣化の生じにくい安定した材料といえる。
(2)締固め特性
表-4に各材料の最大乾燥密度ρdmaxと最適含水比woptを示す。また、図-1〜図-6に各材料の締固め曲線および締固め前後の粒度試験結果を示す。
コンクリート破砕材は、締固め前後の粒度分布の関係では若干の粒子破砕が確認された。締固め曲線では,一定以上の含水量では排水されてしまい、曲線が山なりとならない結果となった。
瓦破砕材の締固め前後の粒度分布は、瓦の性質上、扁平な形状の礫が多いため、明瞭な粒子破砕が確認された。また、締固め曲線は、一定以上の含水量では排水されてしまい、曲線が山なりとならない結果となった。
大谷石破砕材は、締固め前後の粒度分布の関係では若干の粒子破砕が確認される。締固め曲線は、一般的な粗粒土が示すような、鋭く立った山なりの曲線を示すが、最大乾燥密度はρdmax=1.402g/cm³と細粒土相当の低い値を示す。
(3)再利用可能な用途について2)
コンクリート破砕材および瓦破砕材は、礫質土に分類され、試料の安定性も良好である。このため、道路材料、埋戻し材料としては適用性がある。ただし、細粒分が少なく、保水性に乏しいため、築堤等には不向きである。特に瓦破砕材は、粒子破砕が顕著(扁平な形状の礫多い)なため、締固め特性が不安定であり、品質管理の点では、今後検討が必要である。
大谷石破砕材は、礫質土に分類され、凝灰岩で懸念されるスレーキングも生じにくく、やや軽量な特徴を持つ。このことから、道路、埋戻材料および軽量盛土など多くの用途に利用出来る可能性がある。

4.おわりに(結果と課題)
コンクリート瓦礫は、単体ではなく、骨材としての利用、瓦瓦礫は、粒子破砕を生じやすい扁平率の礫分を取り除くなどの粒度調整後の利用、大谷石瓦礫は、軽量な特徴を考慮した盛土材としての利用など、それぞれの特徴を生かした利用3)をするため、今後さらなる検討を実施していきたい。
また、福島県特有の問題である放射線量やコンクリート瓦礫の六価クロムの溶出量など、環境適合性についても毎回の検査を実施し、その都度適切な処置を施した上で利用することが望まれる。
《引用・参考文献》
1)(株)高速道路総合技術研究所:設計要領第一集土工編,2012.7.
2)土木研究所編:建設発生土利用マニュアル,2004.9. 3)地盤工学会-地盤環境研究委員会:災害廃棄物焼却主灰を原料とする再生資地盤材料利用を対象とした物性 評価スキーム 第一版,2012.12.
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