1)案内 湧 千手観音堂および清水(湧水)は図-1中央に、行井戸と塩釜神社は右下にあり、磐越東線の「舞木」駅から東南東方向に位置する。
千手観音堂へは、舞木駅の方からは非常に分りにくいので、郡山東部広域農道の西側にある寺山地区を目当てに訪ねるのが良い。広域農道から西側に入って、300mほど行くと急な下り坂の下でT字路にぶつかる右側の山裾に古びたお堂があり、それが千手観音堂である。北側と東側は標高320m〜350mの丘陵地であり、南側と西側には谷底の平坦地があり、水田になっている。
行井戸は、三春ダムのダムサイト下流右岸の西方地区にあり、周囲は標高280m程度の段丘が発達し、行井戸の前は完新世の沖積低地となり水田が広がっている。なお、塩釜神社の位置は標高310mの丘陵となっている。
2)千手観音堂の清水
井戸は直径1m程度のコンクリート製井側があり、二つ折れのコンクリート製の蓋が設置されている。井側の上端にオーバーフロー用のVP単管が設置されている。井戸の中はよく分からないが、周りの湧水を取り込むようなっているものと思われる。深さは覗いた感じでは1m程度である。
湧水量は、観察したときは、写真-4に示すように毎分4L程度であった。近所に住む60代の男性の話しでは、雨季の時期には毎分10〜20L程度の湧水量があるとのことでした。また、現在は飲料水としては飲めないが、国道工事の行われる前までは飲んでいたことや、小さい頃は桶で運んで生活用水として使用していたこと等を話してくれました。
3)千手観音堂と清水の様子といわれ
観音堂には千手観音が祀れているそうですが、入り口からは拝見することはできなかった。
清水は、写真-3、写真-4に示すように現在は殆ど湧水していない。
伝説では、この綺麗な水で目の悪い人が目を洗うと早く治ると言われ、ここをお参りする人が絶えなかった、と言われている。そして、このお堂に観音様を奉納したのは病気が治った人が奉納したのではと、言われているそうです。

また、清水の近くには石仏も奉納されている。
それと、写真-6に示す様に清水の下流には池があり、池にはタニシが沢山住んでいます。
そのタニシがお堂を守ったと言う言い伝えがあります。観音堂の近くで火事があった際、火が迫る観音堂の屋根に、池に住む沢山のタニシが上り、殻を盾にして火事からお堂を守ったが、タニシはみな貝殻の先が焼け落ちたとのことです。その後、池に住むタニシはみな貝殻の先がなくなってしまったと言われています。
また、近くに住む80代の主婦の話では、この池で小さい頃は泳いで遊んだそうです。 清水の水量は一昨年前の地震前は10〜20L/分位は出ていたような感じがすると、言っていました。そして、清水で目の病気が本当に治った、と言う人の話は聞いたことがないと言っていました。
今も、4月中旬と10月中旬に10軒位で掃除をして、お堂や清水そして池を大切に守っているそうです。
4)行井戸の様子といわれ
行井戸の井戸部分の大きさは1m×1m程度、深さ0.8m程度、また洗い場の方は1.5m×2m程度で、深さ0.3m程度である。湧水量は5L/分程度で、水草は浮いているが、水は全体に綺麗である。
この井戸の水が西方水かけ祭りの最初に掛け合う水とされている。西方水かけ祭りは、毎年元旦に前年度に結婚した男性の家を宿として、この地区の青年がまわし一つで水をかけ合い、後に田んぼの泥水をかけ合うので「泥かけ祭り」ともよばれています。
水かけが終わると、西方地区の初嫁が集い、神に嫁としての勤めを誓った後、椀籠に、すりこぎ・しゃもじ・柄杓などを背負って接待に当たるそうです。
この、水かけまつりは、若者同士の婚姻承認の祝福儀礼と氏子入りの試練の一つとされています。また、新年の厄除け、五穀豊穣・子孫繁栄・村内安全の祈願が合さったものとされています。
地元の農婦の話では、昔は大滝根川で身体を清めてから儀式を行ったと言っていました。
井戸の水は現在、飲料水や洗い水としては使われていないようだが、昔は、コンクリートや石で囲った方は飲料水として利用し、周囲を囲ってない方は、洗い場として利用していたそうです。
また、周囲の掃除を年2回、春は4月の第3日曜日、秋は11月3日に行うそうです。
5)湧水機構
千手観音清水は、地形の状況から丘陵の山腹に降った雨水が花崗岩の風化帯ないし裂罅帯を通り湧き出ているものと思われる。
行井戸周辺の地質は花崗岩類を主体とし、丘陵地形の先端に位置する塩釜神社および井戸の北西100m付近の斜面の花崗岩類は、概ね風化してマサ化しているが、一部ブロック状を呈する。岩盤の状況から、地下水が浸透し易い状況となっている。
6)水質について
主要溶在成分のアニオン(陰イオン)の炭酸水素(HCO3-)・塩化物(Cl-)・硫酸(So42-)・硝酸(No3-)の4イオン、カチオン(陽イオン)のナトリウム(Na+)・カリウム(k+)・カルシウム(Ca2+)・マグネシウム(Mg2+)の4イオンについて分析し、これらの値をトリリニアダイヤグラム表およびへキサダイヤグラム表に示す。
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