エベレストを眺めたい! No.1


 今回のトレッキング参加の目的はヒマラヤ山脈の周囲の地形・地質を1997年から巡検してきたにもかかわらず、エベレストは飛行機(マウンテンフライト)でしか見たことがなかったためです。海外での巡検は案内者無しでは難しく、今回もネパールのトリブバン大学関係者に依頼していましたが、彼らの都合がつかず自分達での巡検となりました。ただ幸いなことに吉田勝博士ら同大学の研究者による案内書(GUIDEBOOK for HIMALAYAN TREKKERS (2) 2011)をもとに巡検することが出来ました。
 今回の旅程は10月10日〜27日までの18日間で、その間の12日間エベレスト街道を歩いていました。このトレッキングルートはエベレストへ登頂する山岳隊も通るルートで、2840mのルクラから始まる徒歩でのみたどることができる道です。シェルパ族の生活路でもある整備された街道にはロッジが多数設けられていて、高山病に注意し、日本アルプスを縦走できる体力があれば誰でもエベレストを眺める地点まで到達することは可能です。今回は6人(男4女2)の仲間で行きましたが、平均年齢は68歳(64〜72)で全員が5100mまで到達しエベレストの峰々を堪能することができました。ただ残念ながら最終目的地であったカラパタール(5550m)までは降雪のため到達できませんでした。



 トレッキングはわれわれ6人のほかにサポートしてもらったシェルパ9人の15名で行いました。多くのツアーと同様にテント・寝袋や食料はシェルパとヤクが運び、われわれは自分の身の回りの品物だけをサブザックで背負うだけでした。テントサイト(放牧地)に到着するとシェルパがテントを設営し食事を準備してくれるので、日本でのテント山行より楽と感じました。日本人に合わせた食事の提供もあり体力維持ができました。



 今回のトレッキングで自分として一番注意していたのは高山病でした。2004年にチベット側のエベレストベースキャンプ(5200m)で1泊したときに高山病で頭痛がひどかった経験をしていたので、64歳となり体が高度順化に対応できないのではないかと心配していました。前回は高所でビールを1本飲んだことが原因の一つと考え、エベレスト街道では禁酒し、代わりに水分を一日に3リットルとることにつとめました。高山病の特効薬とされるダイアモックス錠を服用しましたが、利尿剤でもあるため、夜間のトイレ回数が多くなり、睡眠不足になりそうだったので半錠ずつ朝晩に2日分で服用を止めました。その他呼吸を深くし、ゆっくり行動することを心掛けたため高度順化はうまくいったようでした。ただ4000m以上では空気が乾燥していて、喉が痛み咳が続き、高山病の一つと考えられました。日本から多量に持参したマスクを着用して対応しましたが、帰国するまで咳は続きました。
 また、高山病対策として血中酸素濃度を測るパルスオキシメーターを携行し夕食後各自測定し体調管理に注意しました。私の血中濃度の最低は78%を宿泊最高標高地点のロブチェ(4910m)で測定しました。高度順化がうまくいっていれば70%台でも大丈夫とされます。全員が70%を切ることはありませんでした。シェルパ頭のリードが的確で高度順化が適切であったと思います。
 次回以降、エベレスト街道沿いの崩壊地形と地すべり地形、大陸衝突によって活動した第三花崗岩について紹介します。


※元 高校地学教師・新協地水(株) 地下水チーム



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