私の山紀行 第18回 初秋 南会津の山々(帝釈山脈)


 帝釈山脈は、福島県と栃木県との県境に連なる山塊で東北地方と関東平野を隔てる中央分水嶺であり、会津経由で新潟に流れる阿賀川と関東平野を流れて利根川へとつながる鬼怒川源流域に当たります。この山脈には、荒海山,田代山,帝釈山,台倉高山など魅力的な山々が多く、田代山から西側の山は標高が2,000mを超えています。山容は比較的なだらかで、針葉樹林が生い茂り所々に湿原をちりばめた森林の山ということと、同じような高さの山々に囲まれているため、平地からほとんど見ることができない秘境であったということが大きな特徴です。田代山そして帝釈山(土と水48号に掲載)については、南会津町の湯の花温泉を経由して猿倉登山口から幾度か登頂したものの、「桧枝岐村側から、いつか行ってみたい」山域の一つとなっていました。特に、以前の台倉高山は大正から昭和にかけて盛んに登られた時期もあったそうですが、ごく最近までは、アプローチが長く本格的な登山愛好者のみが尾瀬沼・燧ガ岳への縦走コースの通過点として登頂していた目立たない山でした。しかし、国有林林道である舟岐川林道および登山口となる馬坂峠登山口が整備され2007年8月に「尾瀬国立公園」の一部として指定されてから、「山頂からの素晴らしい景観」と「手軽に登れる山」として脚光を浴びる山となりました。
 いつか行ってみたい山に加え、新聞広告にあった「ふくしま応援事業」での宿泊割引を利用して、桧枝岐村の民宿に宿泊しながら尾瀬国立公園の山々を巡る山行を早々に計画しました。今回は、その1日目の台倉高山(2,067m)そして帝釈山(2,060m)の山行を紹介します。
(表題 会津駒ケ岳から帝釈山脈を望む 左ピークが帝釈山、鞍部の馬坂峠をから右の尾根伝いへ最初のピークが台倉高山)

☆2014年9月14日(日) 晴れのち曇り

 秋の定番となっている尾瀬の山行だが、桧枝岐温泉観光協会の新聞広告が目に止まったこと、そして天候が良好なことから、例年より若干早めて9月14〜15日の連休を利用して訪れることを直前に決定した。当日は朝4時に起床、ほぼ1年ぶりの桧枝岐の山々に心が躍る感覚を抑えながら、郡山の自宅を6時前にはスタートをして桧枝岐村へ、そして8時30分頃舟岐川林道へ入る。ガイドブックによればこの林道を登山口となる馬坂峠まで約14.5?を走ることになる。最初は舗装されているが砂利道となり不安を抱えながらの走行となるが、この林道には数か所「登山口までの所要時間」が書かれた案内板が設置されていることから安心して進むことができる。林道を走ること、約35分で登山口となる馬坂峠に到着、ここは林道の終点そして広い駐車場(20台程度は駐車可能か)となっておりトイレも整備されている。すでに12台の県内外の車が駐車してあり、さらに林道を登ってくるエンジン音も聞こえてくることから、気忙しく準備を整え、9時20分にスタートをする。ここの登山口の標高が1,790mであることから、台倉高山への比高は277mとなる。登山口から階段状の木道が急勾配で続いており、最初は気温が12℃と寒さを感じたが歩き始めてすぐに体が温まってくる。尾瀬の山らしく針葉樹林の木立は高く、日差しが十分に届かないため鬱蒼とし、苔に覆われた倒木そしてオオシラビソやコメツガなどが発する甘い香りが、尾瀬の山としての雰囲気を醸し出している。水場となっている沢を渡り、朝露に濡れた緩い傾斜の木道を滑らないように十分に注意をして登っていくと、9時47分「鹿の休み場」を通過しさらに、アップダウンを繰り返しながら徐々に標高を上げていく。標高2,000mを超え稜線に出ると勾配が緩んでくるものの、泥濘が多く大変歩きにくくなる。すぐに木道となり一転して空が広く日差しも十分に届くようになると、登り始めて44分,10時4分に三段田代と呼ばれる湿原に到着する。小さな湿原だが趣のある湿原で、すでに秋は深まり草もみじが始まっている。ここからまた、アップダウンを繰り返しながらの行程となる。10時27分に標高2,033mの小ピーク、ここでようやく目指す三角錐の台倉高山の山容を望むことができる。ここから先もアッフダウンの繰り返しとなり、さらに木の根が密集した道となるため大変歩きにくいが、小さな湿原そして三角錐の山がみるみる近づいてくる。ワクワクしながら最後の急傾斜に取りつきほどなく稜線の急勾配を登るようになり、登り始めて1時間29分,10時49分に山頂に到着する。山頂からの眺望は、遮るものはない360度の大パノラマが広がり、田代山,帝釈山から西側には、丸山岳,三つ岩岳,会津駒ヶ岳,燧ガ岳が連なっている。日光方面は、奥白根山をはじめとする山々が高くそして間近に広がっており、感動の頂となる。そして周辺は雲が厚いもののこの頂だけが空が高い、この空間に存在するのは我々二人きり、いかにも奥まった南会津の山という実感がわいてくる。行動食としてバナナで小休止、21分休んで11時10分に数年かけてようやくたどり着いた頂を後にする。下山も慎重に、1時間11分かけて12時21分に峠に到着、若干の小休止で下りに対応した体の全機能を再度登りモードに変え、12時33分に道路反対側の帝釈山登山口に入る。
 帝釈山への登りも同様に急勾配で階段状の木道となっているが、すれ違う人が圧倒的に多い。登り始めて20分で木道から大石がごろごろと点在し、木の根が密集した道へと変化をする。気温は、午前とあまり変わらず13℃であるが、汗が滴り落ちる状態で息づかいも荒くなり、整備以前の燧ガ岳の登山道を彷彿させる。この急勾配での登りは、緩まることはなく山頂直下まで続き、休みなく登り続ける感がある。息も絶え絶えとなり始めたころ、登り始めて35分,13時8分に帝釈山脈の盟主、帝釈山頂に到着する。ここからの眺望もまた、360度の大パノラマとなっている。4パーティ,6人が休んでいる山頂で、居場所を確保し、はまっている高級カップラーメンを堪能しながら、大パノラマの風景に心から浸ることに。ゆっくり休んでいると、あっという間にガスで視界も悪くなり、寒さを感じるようになる。楽しみに計画をしていた南会津の山の風景に大満足をして13時43分に下山を開始する。大石そして木の根につまずかないよう、転がるように下山し、登山口には、14時1分に到着する。本日の山行距離は10.1?、早朝から行動していたため膝そして足首に若干の疲れも本日は、桧枝岐村の民宿泊まりであることから、温泉と山人料理そして地酒を楽しみに、14時20分に峠を後にする。

台倉高山(登り1時間29分,下り1時間11分)
帝釈山(登り35分,下り18分) 
      



※新協地水(株) 代表取締役



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