ボリビア便り第2号 「真夏のサンタさん」
代表幹事 佐藤 正基

1. はじめに

 この度7月25日をもって「葛尾村賠償井戸工事共同企業体」(以下、企業体)を解散する運びとなりました。東京電力福島第一原発事故による全村避難が続く葛尾村では、帰村したときに飲料水をどう確保するかが課題でした。同村は、村の大半が沢水や湧水を飲料水として使用していたため、住民から「放射能で汚染されているのではないか」という懸念の声が上がり、村は東電に安全な飲料水の確保を要求しました。これを受けて東電は賠償として各世帯に深井戸を設置することを決定しました。福島県さく井技術協会では、葛尾村からの要請を受け、東電と村の賠償の話し合いに地下水の専門家として参加をし、度重なる話し合いの結果、当初の賠償方針から多少とも住民に有利な内容に変更させることができました。協会の誠実な対応は、村,福島復興局,東電から信頼を得ることができ、協会が中心となって賠償井戸工事を施工することになりました。このため、協会を一般社団法人化して、施工に責任を負う企業体を協会会員の内12社が結集をして設立することになりました。企業体は、統一した施工管理の下で住民の要望する深井戸を品質にバラツキがでないようにすることそして、期間内に深井戸を設置することを目標としました。
 平成26年6月16日に松本村長に参加していただいて安全祈願祭を開催し、本格的な井戸工事を開始しました。この1年で、154件の井戸を完成させてきました。完成させた井戸からセシウムの検出はなく、99.9%安全な飲料水を確保することができました。協会および個々の会員企業がこの事業に携わることができ、葛尾村の復興そしてこの福島の復興に大きく貢献できたものと考えています。帰村をする住民そして関係者さらには施工を行った個々の企業が「売り手よし、買い手よし、世間よし」といった、三方よしの精神を貫いて事業に当たれたことは、今後の協会の在り方を考える上で大きな経験であったと考えています。これから、賠償井戸を申し込むという方々もありますが、工事の集中期間が終息したことを受けて、企業体を解散する決定をいたしました。

2. 事業経過と成果

 東京電力は、当初水量および水質に係らず、一律50mの深井戸を掘削して住民に引き渡す方針とし、一括ゼネコンに発注する計画でした。協会会員は、その枠組みの中で下請けとして協力をしてほしい、広域地下水調査は、東電のグループ企業が実施をするという内容でした。村に専門家としての立場で東電との交渉に参加をすることを提案し、協会幹部を中心として、平成25年5月28日から12月11日まで計11回の交渉を行い、論争してきました。特に葛尾村が位置する阿武隈高原での地下水開発の難しさを、専門家として訴えてきました。すべてを「葛尾村民のための生活再建」の立場を貫いたことが、村当局と住民の信頼を得て、大きなうねりとなって国そして東電担当者の心を動かし、全国でも類を見ない、住民の個別賠償井戸工事となって動き始めました。以下、協会および企業体の経過を時系列として記載します。
 平成27年6月17日現在(第16回運営委員会報告)、176件の井戸工事に着手そして154件の井戸を完成させてきました。この中で水量不足による不調および水質不良による不調が7件で全体の4.5%と不調率が非常に低い状態で推移しています。この不調率の低さから、現場そして企業体専任職員(各幹事会社から派遣)の苦労が見て取れます。花崗岩特有の孔壁崩壊に見舞われ幾度となく再掘削となった現場、住民から「生活用水となる水を何とかしてくれ」とお願いされ、現場に強硬に指示せざるを得なかった企業体専任職員の気苦労など、工事に関わったすべての人が「葛尾村民のための生活再建」の立場を貫いてきた、血と汗と涙の結晶です。



3. 新協地水の経営理念が果たした役割

 新協地水では、共同企業体結成に至る規則および事業計画など、実務的な準備に当たってきました。企業体の代表,専従の所長代理,代行会社(住民に代わり東電との窓口となる)の専従事務長など中心となる職員についても新協地水が派遣し、実質的にこの事業の中心的役割を果たしてまいりました。こうしたリーダー的役割を果たせた要因として、弊社の経営理念が大きく関与しています。弊社には創立以来業務すべての判断基準となる経営理念があります。「住みよい地域づくりと地域の保全、社会発展を目指す」という理念は、葛尾村民の帰還と村の復興に「生活再建のための飲料水」としての井戸の役割を考えるという信念が強く浸透し、企業体関係者にも伝わったことで、行動規範の方針が明確となりました。この考えが、葛尾村そして住民との間の信頼を育み東電担当者の心を揺さぶる大きな武器となったと考えます。弊社では、これからも「地域に貢献する企業は、地域に必要とされ、地域から見捨てられない」ということを信念に、地盤と水に関して「安全と安心」を提供してまいる所存です。
 葛尾村民にとって生活用水の確保は、帰還への第一歩です。これから、具体的な生活を行うためのライフライン整備が行われます。我々福島県さく井技術協会そして賠償井戸に携わったすべての関係者が、葛尾村が復興し、原発事故以前の豊かな営みができることを切に願っています。また、このような事業を決断された、村幹部の方々に敬意を表し、葛尾村に帰村される皆様の今後のご多幸を祈念するとともに、協会にこのような機会を与えていただいたた葛尾村長をはじめとする役場関係者そして福島復興局の関係者並びに東京電力の担当者には、あらためて感謝をいたします。

平成26年5月15日(木)
郡山青少年会館 葛尾村賠償井戸工事
東京電力(株) 福島県さく井技術協会との調印式
平成26年6月17日(火)
葛尾村賠償井戸工事 住民説明会
19時〜20時 下葛尾地区 狐田仮設集会所
23名参加
平成26年5月15日(木)
郡山青少年会館 葛尾村賠償井戸工事
東京電力(株) 福島県さく井技術協会との調印式
平成26年6月18日(水)
葛尾村賠償井戸工事 住民説明会
19時〜20時 広谷地地区 鷹巣瀬山仮設集会所
10名参加
平成26年6月5日(木)
葛尾村賠償井戸工事 住民説明会
19時〜20時 上野川地区 貝山仮設集会所
18人参加
平成26年6月16日(月)
葛尾村賠償井戸工事 安全祈願祭
平成26年6月13日(金)
葛尾村賠償井戸工事 住民説明会
19時〜20時 大笹地区 旧中郷小仮設集会所
15名参加
平成26年6月16日(月)
葛尾村賠償井戸工事 安全祈願祭


平成26年6月16日(月)
葛尾村賠償井戸工事 安全祈願祭
来賓挨拶 葛尾村村長 松本允秀(まさひで)
平成26年6月25日(水)
復興庁福島復興局・葛尾村役場 来所
葛尾村大字野川地内 現場視察
平成26年6月16日(月)

葛尾村賠償井戸工事 安全祈願祭
主催者挨拶
福島県さく井技術協会 会長 須藤和徳(かずよし)
平成26年7月18日(金)
福島建設センター
平成26年度労働安全衛生講習会
(午前)葛尾村賠償井戸工事に関する説明会
平成26年6月16日(月)
葛尾村賠償井戸工事 安全祈願祭
鍬入之儀
福島県さく井技術協会 会長 須藤和徳(かずよし)
平成26年7月18日(金)
福島建設センター
平成26年度労働安全衛生講習会
(午後)労働安全講習会 約40名参加
平成26年6月16日(月)
葛尾村賠償井戸工事 安全祈願祭
平成26年10月14日(火)
安全パトロール
安全パトロール出発式 9名参加


平成26年10月14日(火)
安全パトロール
(有)佐藤工業 施工中 夏湯地区
平成26年10月14日(火)
安全パトロール
地質基礎工業(株) 施工中 広谷地地区
平成26年10月14日(火)
安全パトロール
(有)佐藤工業 施工中 夏湯地区




1.平成25年5月28 日(火)
Jヴィレッジ(〒979-0513楢葉町山田岡美シ森8)にて東京電力(株)、さく井技術協会との初回打合せ(協会:谷藤、須藤、阿部、山家、丹治、片岡)

2.平成25年7月4日(木)
Jヴィレッジ(〒979-0513楢葉町山田岡美シ森8)にて東京電力(株)、さく井技術協会との第2回打合せ(協会:谷藤、須藤、阿部、山家、丹治、片岡)

3.平成25年7月5日(金)
葛尾村役場三春出張所にて葛尾村、東京電力(株)、さく井技術協会との第3回打合せ(協会:谷藤、須藤、阿部、山家、丹治、片岡)

4.平成25年7月25日(木)
日本生命ビル(福島市大町5-6)にて東京電力(株)、さく井技術協会との第4回打合せ(協会:谷藤、須藤、阿部、山家、丹治、片岡)

5.平成25年8月1日(木)
福島復興局(福島市栄町11-25 AXCビル5階)東京電力(株)、さく井技術協会との第5回打合せ(協会:谷藤、須藤、阿部、山家、丹治、片岡)

6.平成25年9月13日(金)
日本生命ビル(福島市大町5-6)にて東京電力(株)、さく井技術協会との第6回打合せ(協会:谷藤、須藤、阿部、山家、丹治、片岡)

7.平成25年10月1日(火)
福島復興局(福島市栄町11-25 AXCビル5階)東京電力(株)、さく井技術協会との第7回打合せ(協会:谷藤、須藤、阿部、山家、丹治、片岡)

8.平成25年10月18日(金)
メディアシティエスタビル10階(福島県福島市栄町6-1)にて東京電力(株)、さく井技術協会との第8回打合せ(協会:谷藤、須藤、阿部、山家、丹治、片岡)

9.平成25年10月24日(木)
一般社団法人福島県さく井技術協会設立(登記)

10.平成25年10月31日(木)
葛尾村役場三春出張所にて葛尾村、東京電力(株)、さく井技術協会との第9回打合せ(協会:谷藤、須藤、阿部、山家、丹治、片岡)

11.平成25年11月14日(木)
福島県さく井技術協会(福島市中町4-20みんゆうビル6階)にて東京電力(株)、さく井技術協会との第10回打合せ(協会:谷藤、須藤、阿部、山家、丹治、片岡)

12.平成25年12月11日(木) 13時30分
福島市杉妻会館3階に於いて「葛尾村賠償井戸工事共同企体」設立総会開催、参加12社による企業体協定書調印(1安藤ボーリング2大塚さく井工業3北日本ボーリング4木幡ボーリング工業5佐藤工業6三本杉ジオテック7新協地水8地質基礎工業9東建土質10日栄地質測量設計11福島地下開発12フタバコンサルタント)

13.平成25年12月11日(木)
福島県さく井技術協会(福島市中町4-20みんゆうビル6階)にて東京電力(株)、さく井技術協会との第11回打合せ(協会:谷藤、須藤、阿部、山家、丹治、片岡)





14.平成25年12月14 日(土)〜12月20日(金)までの6日間

葛尾村応急仮設住宅内集会所にて
【主   催】 東京電力(株)5名
【補足説明】福島復興局2名、葛尾村5名、一般社団法人福島県さく井技術協会2〜3名により「飲料水の安全確保にかかる費用」の賠償に関する住民説明会を各行政区毎に2時間程度要し10回開催

15.平成25年12月25日(水)
葛尾村賠償井戸工事共同企業体(葛尾村落合菅ノ又地内148-2)現場事務所2棟をプレハブ仮設

16.平成25年12月27日(金)
葛尾村賠償井戸工事共同企業体(葛尾村落合菅ノ又地内148-2)現場事務所敷周辺 電気探査実施

17.平成26年1月23日から
葛尾村賠償井戸工事共同企業体(葛尾村落合菅ノ又地内148-2)現場事務所用仮給水井戸を80m掘削。

18.平成26年2月5日(水)
福島民報
「葛尾村、水源調査へ帰村後の飲用水確保対策」

19.平成26年2月6日(木)
岳温泉 碧山亭にて
「賀詞交歓会及び葛尾村井戸工事技術交流会」開催
講習会15時〜16時半(正会23名/賛会18名)
懇親会18時(正会18名/賛会13名)参加

20.平成26年3月22日(土)
福島民報「井戸掘削回数で溝
住民帰還へ複数要望東電1回限と難色

21.平成26年5月15日(木)
郡山市青少年会館(福島県郡山市大槻町字漆棒82番地)にて東京電力(株)と福島県さく井技術協会との葛尾村賠償井戸工事の覚書「調印式」

22.平成26年6月4日〜6月19日までの10日間
葛尾村応急仮設住宅内集会所にて一般社団法人福島県さく井技術協会並びに葛尾村賠償井戸工事共同企業体により賠償井戸工事に関する住民説明会を開催、10日間で葛尾村 村民132名が参加された。

23.平成26年6月16日(月) 午前十時より
葛尾村賠償井戸工事共同企業体 仮設事務所敷地内でさく井技術協会並びに共同企業体主催により「葛尾村賠償井戸工事安全祈願祭」を開催 
葛尾村 松本村長、村議会議員、各地区代表、福島復興局、東京電力、さく井技術協会員など約40名が参加し地元、津島稲荷神社 井瀬宮司により執り行われた。

24.平成26年6月23日(月)
葛尾村 松本佐一様宅 第一号 葛尾村賠償井戸工事着工

25.平成26年6月25日(水)
福島復興庁 来所(復興庁関係者約10名 葛尾役場5〜6名)葛尾村大字野川掘削現場 視察

26.平成26年6月末日
累計――申込みリスト60件 代行契約発送10件
工事契約1件





27.平成26年7月18日(金)
福島県建設センター(福島市五月町4-25)一般社団法人福島県さく井技術協会・一般社団法人福島県地質調査業協会共同開催 平成26年度労働安全衛生講習会約40名参加
10時〜12時 葛尾村賠償井戸工事に関する説明会
13時半〜16時 労働安全講習会(労働災害の防止について/建設機械の安全講習/ヒヤリ・ハット体験談5名)

28.平成26年7月末日
累計――申込みリスト77件 代行契約発送53件
工事契約12件

29.平成26年8月26日(火)
福島建設工業新聞「年内100件の完成目指す
葛尾村賠償井戸工事JV

30.平成26年8月31日(日)
根本復興(前)大臣が来所され掘削現場を視察された。(須藤会長、谷藤顧問、阿部所長が対応)

31.平成26年8月末日
累計――申込みリスト105件 代行契約発送88件
工事契約48件 東電請求1件

32.平成26年9月8日(月)
福島民報「帰還に向け飲料水確保本年度中に150世帯目指す

33.平成26年9月末日
累計――申込みリスト153件 代行契約発送108件 工事契約76件 東電請求8件

34.平成26年10月14日(火)
安全パトロール 佐藤工業(下葛尾/夏湯)、地質基礎(広谷地)パトロールを実施、問題となる指摘事項無し

35.平成26年10月15日(水)
福島民報「深井戸掘削が本格化 葛尾村 原発事故賠償の一環」

36.平成26年10月27日(月)
東京電力(株)へ工事契約済60件分の着手金として1億2千万円請求

37.平成26年10月末
累計――申込みリスト166件 代行契約発送133件 工事契約111件 東電請求14件

38.平成26年11月末日
累計――申込みリスト169件 代行契約発送167件 工事契約131件 東電請求27件

39.平成26年12月1日(月)
臨時 運営委員会開催 新協地水(株)会議室にて
6名参加

40.平成26年12月末日
累計――申込みリスト177件 代行契約発送167件 工事契約140件 東電請求49件





41.平成27年1月末日
累計――申込みリスト180件 代行契約発送178件 工事契約152件 東電請求59件

42.平成27年2月27日(金)
NHK仙台放送局 掘削現場取材(阿部所長対応)
〇被災地からの声 〇津田喜章アナウンサー
〇放送:3月5日(木)12:20〜12:43 <東北6県エリア>

43.平成27年2月末日
累計――申込みリスト182件 代行契約発送181件 工事契約162件 東電請求71件

44.平成27年3月末日
累計――申込みリスト183件 代行契約発送182件 工事契約171件 東電請求85件

45.平成27年4月末日
累計――申込みリスト185件 代行契約発送185件 工事契約171件 東電請求107件

46.平成27年5月末日
累計――申込みリスト188件 代行契約発送188件 工事契約175件 東電請求140件














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