1.はじめに
2007年から2012年間の室内土質試験データ、岩石試験データをとりまとめた。2007年から2010年の4年間のデータは、震災による喪失を免れたものである。また、2011年と2012年のデータは、災害調査や震災復興事業において実施したものである。
表-2.2には、採取場所、地形・地質・岩石、試料No.および試験項目を土質試料と岩石試料に分けて示した。

2.土質試料と試験項目
表-2.2の土質試料は、粘性土、砂質土、礫質土の3種と特殊土に分類される有機質土、火山灰質粘性土、まさ土の3種に分けて示した。粘性土は12地域16試料、砂質土は7地域10試料、礫質土は2地域3試料、有機質土は5地域7試料、火山灰質粘性土は4地域7試料、まさ土は3地域7試料であり、合計50試料である。
試験項目は、表-2.1に示す土粒子の密度試験、土の含水比試験、土の粒度試験、土の液性限界・塑性限界試験などの物理試験の他に土の水素イオン濃度試験、強熱減量試験、有機物含有量試験、保水性試験などを行った試料もある。力学試験は、土の圧密試験、一軸圧縮試験、三軸圧縮試験、繰返し三軸試験などである。
3.力学特性
3.1 圧密特性
標準圧密試験は、粘性土6試料,砂質土3試料,有機質土6試料および火山灰質粘性土3試料で実施した。
e〜logp曲線を図-3.2に示す。含水比がWn=100(%)以上の試料において初期間隙比eが大きく、圧密圧力の増加に伴う間隙比の減少が著しく圧縮性が高いことが分かる。また、圧縮指数Ccと圧密降伏応力Pcの範囲を土質区分毎に以下に示す。

圧縮指数は、有機質土で大きく、圧縮しやすいことが分かる。圧密降伏応力は、正規圧密状態か過圧密状態かによって異なるため、一概に比較はできないものの、有機質土の試料採取深度は浅くGL-3.0m以浅であることから圧密降伏応力が小さく、正規圧密状態であることが推定される。その他の試料については、圧密降伏応力が大きいため、やや過圧密状態〜過圧密状態にあると推定される。なお、砂質土においても3試料の圧密試験を実施したが、3試料とも細粒分(シルト分+粘土分)FCを31.5〜49.8(%)含有している。
図-3.1には圧縮指数と液性限界の関係を示した。図中の直線は、東京湾沖積粘土の圧縮指数と液性限界の関係式とテルツアギ&ペックが提案している圧縮指数と液性限界の関係式である。この図においてCc=8.282の有機質土の値を除くとテルツアギ&ペックの提案している関係式に近い値となっている。
3.2 せん断特性
せん断特性は、一軸圧縮試験、非圧密非排水(UU)条件下の三軸圧縮試験、圧密非排水(CU)条件下の三軸圧縮試験、間隙水圧測定を行った圧密非排水(CUB)条件下の三軸圧縮試験および圧密排水(CD)条件下の三軸圧縮試験から得られた強度特性について示す。
土のせん断強さ(τf)は、与えられた応力条件によって異なり、その関係式は種々提案されているが、一般的には、モール・クーロンの破壊基準として知られている

が最もよく用いられている。ここで、cは粘着力、φはせん断抵抗角、σはせん断面に作用する垂直応力である。この関係を有効応力表示すると

となる。ここに、σ’はせん断面に作用する垂直有効応力、uは間隙水圧である。(c,φ)あるいは(c’,φ’)は土固有の値ではなく、含水比、密度、応力履歴などによって変化する値であり、一種の実験定数といえる。さらに試験で求められる強度定数(c,φ)は、試験のときの排水条件によって異なる。このため、以下のように排水条件に対応するサフィックスを付けて表示される。
圧密排水条件(CD):粘着力cd,せん断抵抗角φd
圧密非排水条件(CU):粘着力ccu,せん断抵抗角φcu
圧密非排水条件(CUB)間隙水圧測定:
粘着力c’,せん断抵抗角φ’(有効応力)
非圧密非排水条件(UU):粘着力cuu,せん断抵抗角φuu |
図-3.3にせん断応力τと垂直応力σの関係図を示す。
なお、一軸圧縮試験から得られる一軸圧縮強さquは、拘束圧を作用させない、あるいは拘束圧が負圧の状態における非圧密非排水条件(UU)の圧縮強度であり、quの1/2が粘着力cuuに相当する。
(1) 一軸圧縮強さ(qu)
一軸圧縮試験は、粘性土6試料、砂質土2試料、有機質土4試料、火山灰質粘性土2試料を実施した。土質分類毎の一軸圧縮強さquと粗粒分含有率CCを以下に示す。

粗粒分を多く含む砂質土と圧縮時に排水される有機質土の一軸圧縮強さは小さく、粘性土、火山灰質粘性土の一軸圧縮強さは大きい。
図-3.4に示した一軸圧縮強さと変形係数の関係は,一軸圧縮強さが大きいと変形係数も大きい傾向が見られる。
図-3.5に示した一軸圧縮強さと自然含水比の関係は、有機質土の一軸圧縮強さは、自然含水比の多少に係らず同程度の値を示しているが、その他の試料については明瞭な傾向はみられない。
図-3.6に示した一軸圧縮強さと湿潤密度の関係は、湿潤密度が大きいと一軸圧縮強さも大きくなる傾向は見られるものの明瞭ではない。
図-3.7に示した一軸圧縮強さと粗粒分含有率の関係は、粗粒分含有率が多くなると一軸圧縮強さも小さくなる傾向が見られる。これは、粗粒分含有率多くなると非排水条件を満たさなくなり、拘束圧も水および空気が供試体から排水・排気されることにより低下することによるものと判断される。
図-3.8には一軸圧縮強さとN値の関係を示した。この図によると有機質土のN値8を除くとN値が大きくなると一軸圧縮強さも大きくなる傾向が見られる。
(2) 非圧密非排水(UU)条件下の三軸圧縮試験結果
非圧密非排水(UU)条件下の三軸圧縮試験は、粘性土5試料、砂質土2試料、有機質土3試料、火山灰質粘性土1試料を行った。得られた強度定数cuu,φuuを以下に示す。

粘着力cuuは、砂質土、有機質土で小さく、粘性土で大きい傾向が見られる。せん断抵抗角φuuは、砂質土のφuu=10.3(°)を除くとその他の試料は、φuu=4.3(°)以下である。図-3.9に示したせん断抵抗角φuuと粘着力cuuの関係においても同様である。
図-3.10にはせん断抵抗角φuuと飽和度Srの関係を示した。各供試体の飽和度は、Sr=87.8(%)〜99.5(%)であり、ほぼ飽和していると判断される。このため、せん断抵抗角はφuu=0(°)となり、粘着力のみの強度となる。
図-3.11には粘着力cuuと湿潤密度ρtの関係を示した。この図によると湿潤密度が大きくなると粘着力も大きくなる傾向が見られる。
また、図-3.12には粘着力とN値の関係を示した。この図において砂質土のN値7を除くとN値が大きくなると粘着力も大きくなる傾向が見られる。
(3) 圧密非排水(CU)条件下の三軸圧縮試験結果
圧密非排水(CU)条件下の三軸圧縮試験は、粘性土14試料、砂質土9試料、礫質土3試料、有機質土4試料、火山灰質粘性土5試料を行った。得られた強度定数ccu,φcuを以下に示す。

粘着力は、粘性土においてはccu=7.4〜75.0(kN/m2)と広範囲であるが、その他の試料は、ccu=0〜27.9(kN/m2)の範囲である。せん断抵抗角は、φcu=10.6〜35.7(°)の範囲である(図-3.13参照)。
図-3.14〜図3.17に強度特性(ccu,φcu)と湿潤密度やN値との関係を示した。これらの関係図においては,明瞭な関係とはなっていない。
(4) 圧密非排水(CUB)条件下の三軸圧縮試験結果
圧密非排水(CUB)条件下の三軸圧縮試験は、粘性土13試料、砂質土9試料、礫質土3試料、有機質土3試料、火山灰質粘性土3試料を行った。得られた強度定数c’,φ’を以下に示す。

粘着力は、有機質土においてはc’=2.9〜22.5(kN/m2)と他の試料c’=0〜16.8(kN/m2)の範囲よりも若干大きい。せん断抵抗角は、φ’=29.4〜40.7(°)の範囲である(図-3.18参照)。
図-3.19〜図3.20にせん断抵抗角φ’と湿潤密度やN値との関係を示した。これらの関係図においては、明瞭な関係とはなっていない。
図-3.21にはKI-1試料の有効応力経路(p’〜q曲線)を示した。圧密非排水(CUB)条件下の三軸圧縮試験においては、各試料において有効応力経路(p’〜q曲線)を描いてCSL(Critical State Line)を確認している。
(5) 圧密排水(CD)条件下の三軸圧縮試験結果
圧密排水(CD)条件下の三軸圧縮試験は、砂質土1試料と花崗岩の風化残積土であるまさ土5試料を行った。得られた強度定数ccd,φcdを以下に示す。

図-3.22に示したせん断抵抗角φcdと粘着力ccdの関係からはせん断抵抗角φcdが大きいと粘着力ccdが小さくなる傾向が見られる。
図-3.23にはせん断抵抗角φcdと湿潤密度の関係を示した。まさ土のせん断抵抗角φcdは,湿潤密度が大きいとせん断抵抗角も大きくなる傾向が見られる。
図-3.24にはせん断抵抗角φcdとN値の関係を示したが、N値の増加に比較してせん断抵抗角φcdはほぼ同程度の値を示している。
図-3.25にはGH-1試料の応力経路(p〜q曲線)を示した。各拘束圧のp〜q曲線の勾配は、p/q=3/1である。
4.土質試験試料の力学特性と問題点
砂と粘土の工学的特性の比較2)を表-4.1に示した。また、種々の指針や示方書などにおいては、標準貫入試験から得られるN値から支持層の判定や強度定数(c,φ)、変形係数などを推定することが可能である(表-4.2の種々指針・指方書などのN値による地盤特性の判断や土質定数の推定参照)。
3.2せん断特性において一軸圧縮強さや粘着力(qu,cuu,ccu)およびせん断抵抗角(砂質土の場合には摩擦角:φcu,φ’,φcd)とN値の関係について図-3.8、図-3.12、図-3.16、図-3.17、図-3.20および図-3.24に示した。これらの図から一軸圧縮強さや粘着力(qu,cuu,ccu)およびせん断抵抗角(φcu,φ’,φcd)とN値の関係は明瞭な線形関係が見られず、表-4.2に示す各種推定方法とも一致していない。このことは、試験を実施した試料数が試験条件によって6試料〜35試料程度と非常に少ないこと、表-4.1に示す砂と粘土のφ’とφdが30°程度にはなっておらず、物理特性において示した「中間土的性質」を持つ試料が多いことなどが考えられる。したがって、今後もデータ収集を継続し、力学特性に関する考察を行う必要がある。
また、地盤調査時に拘束圧条件、排水条件等を考慮した室内土質試験を行うことによって力学特性(圧密特性、透水特性、せん断特性)を求めることが重要であり、今後もデータの蓄積を重ねて、力学特性とN値に関する考察を行う必要がある。

<参考文献>
1)地盤工学会編 : 地盤材料試験の方法と解説, 2009年11月25日
2)地盤工学会編 :ジオテクノート?中間土砂か粘土か, 2007年6月15日
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