シリーズ

代表取締役社長 佐藤 正基
(RCCM 土質及び基礎)

 会津駒ヶ岳(2,133m)は、福島県を代表する南会津の名峰です。山頂付近一帯は、たおやかな稜線で広大な湿原が広がり、数々の池塘がちりばめられています。会津駒ヶ岳を含む南会津の山々は、それぞれの山が重なりながら連続しているため、磐梯山のような独立峰とは異なり麓から山容を眺めることはできません。自分の足で一歩ずつ登り、山の懐に入ることでしかその全容を確認することが出来ない魅力的な山域です。
 会津駒ヶ岳を含む尾瀬地域は、2007年(平成19年)に日光国立公園から分割し、周辺地域を編入して29番目の国立公園として指定されました。尾瀬国立公園の年間入山者数は、国立公園指定以降32~34万人で推移をしています。東日本大震災直後の2011年には風評被害により、28万人台へと一時的に落ち込みましたが、翌年から福島県そして桧枝岐村を中心とした周辺市町村の努力もあり回復をしました。『夏が来れば思い出す』という国民的愛唱歌で広く知られている尾瀬は、尾瀬ヶ原そしてこれを取り囲む至仏山、燧ヶ岳、会津駒ヶ岳、田代山、帝釈山などの山々が織りなす美しい風景が大きな特徴となっており、テレビのトレッキング番組で「一度は行ってみたい景勝地」の上位にランクインをしています。会津駒ヶ岳は、深田久弥著「山岳紀行」によれば、「人々は、会津といえば第一に磐梯山を思い出すが、駒は磐梯よりも約300m高い。高いだけではなく、上品な山である。・・・・・ぼくはこういうあまり人に騒がれないつつましい山が好きである。」と、書いています。昨今、会津駒ヶ岳を含む「尾瀬国立公園」は、山に魅了された人々にとって楽園として広く親しまれ、新緑から紅葉の季節と多くの登山者で賑わっています。
 私も大好きな「尾瀬国立公園」には年間、春夏秋を通じ訪れています。今回の「山紀行」は、草紅葉に彩られた会津駒ヶ岳の山行を紹介いたします。会津駒ヶ岳は、「山紀行」第1回(2004年10月発行第44号)に掲載をしました。まだ登山経験も少なく、大変拙い紀行文となってしまいました。今回、8回目となる会津駒ヶ岳登山は素晴らしい快晴の下で、草紅葉と素晴らしい風景を見ることが出来ました。この素晴らしい風景に敬意を表しあらためて再掲をするものです。


☆2016年10月16日(日) 快晴
 今シーズン9月以降の休日(土日および祝日)は雨か曇りという、山登りを趣味としている者にとって辛い日々が続いていた。10月も半ば、そろそろ紅葉も真っ盛りの山に行きたいと心が騒ぎ始めた13日に、週末の天気予報をチェックすると、15(土)〜16日(日)は久々に「帯状の高気圧におおわれ秋のさわやかな陽気となる」との予報、あわてて尾瀬桧枝岐温泉観光協会に連絡をしてどうにか民宿を確保する。相棒との協議の結果、初日は尾瀬ヶ原を散策し、二日目に天上の草紅葉の風景を満喫する会津駒ヶ岳へ登ることに!
 15日は、尾瀬ヶ原散策のほど良い疲れと、地酒を含めた体にやさしい山人(やもーど)料理を堪能し、ぐっすり眠ることが出来た。16日朝予報通り快晴、宿の主人に見送られ登山口に至る林道へ入る。国道沿いのグランド駐車場もすでに10数台が駐車してあったことから、無理せず早めにスペースが確保できる場所に駐車。朝の気忙しい準備であまり気にならなかったが放射冷却で冷え込み気温は5℃、ブルブル震えながら身支度を整え、駐車場を午前7時20分にスタートする。スタート地点の標高が約1,043mであるため山頂までの比高は1,090mとなる。林道沿いは、まだ午前7時30分だというのに多くの県内外の車が縦列駐車状態、あらためてこの山の人気に圧倒される。体もほどよく温まり、林道を歩き16分(約1.4km)で登山口となる頑丈な階段に着く。ここから登山道は急峻な九十九折れとなり、朝露で滑りやすい木の根を跨ぎながら一歩一歩前へ。登り始めはカラマツの植林で、紅葉には程遠く最初の忍耐の時間帯となり黙々登る。「山頂まで4.7km」の標柱を過ぎると九十九折れから急峻な一本道となり、様々な色のザックを背負った大勢の人が山頂を目指している。その後姿に共通の目標を持った登山者として連帯感を覚える。標高1,340m付近から白い肌が目立つブナ林となり、ようやく周辺の木々も黄,赤と色づいてくる。「山頂まで4.1km」の標柱を通過、こうした標柱は確実に山頂に近づいていることを樹林帯の中にあっても感じることができ、心と体のストレスを癒すことが出来る。標高1,580mを過ぎると、ようやく木々の葉が赤、黄と彩られ、ワクワクとした昂揚感を覚えるとともに、「山頂まで3.7km」の標柱を通過する。午前8時40分に多くの人が休んでいる水場に到着するものの、喧噪を避けて先に進むことに。標高1,700mを過ぎると登山道は、オオシラビソやダケカンバの樹林帯を緩やかに登ることになり、8時48分に「山頂まで2.7km」の標柱を通過、徐々に視界そして空が広くなり北側に駒山頂から三つ岩岳山頂に至る稜線が木々の間から見られるようになる。風景を撮影し山行データを記録している私と違って、ただ黙々と一心に山頂を目指している相棒は、いつの間にかさっさと行ってしまった。オオシラビソの枯れた針葉の甘い香りが体全体に浸透し、爽快に登っていく。9時17分に「山頂まで1.7km」の標柱通過、石枠階段状の登山道そして木道を行くと、森林限界を超え9時24分にベンチが設置してある休憩ポイントに着く。多くの登山者の中に混じって、相棒が行動食を準備して待っていてくれた。ここからは、天上の草紅葉の一本道(木道)となり澄んだ空気の中、遠くまで見通すことが出来る眺望に心躍りながらの登山となる。午前9時32分に駒の小屋到着、標高が2,060mを超え冷たさを感じることから上着と帽子を着用し、46分にスタート。小屋から山頂までの700m間は、一列に並んでの木道歩き、大勢の人のペースに合わせ、ゆっくりゆっくり高度を上げていく。振り返ると燧ヶ岳が大きく迫り、大津岐へ至る富士見登山道がキラキラ輝いている草紅葉の中、一本筋となって見える。あまりのゆったり登山で変調をきたした相棒は、山頂経由ではなく直接中門岳を目指すことに。オオシラビソの林の中をくぐり抜け、明るい笹原に出ると、午前10時01分登り始めて2時間41分で一等三角点が設置してある山頂に到着する。山頂からは、燧ガ岳や至仏山,平ヶ岳が大きく見え、さらに那須,安達太良,吾妻と東北南部の山々を眺望することが出来る。南南西方向を遠望すると、遠くうっすらと富士山の姿を見ることが出来る。どんどん登ってくる人たちに、展望の席を譲り中門岳へ。
 中門岳に至る稜線は草紅葉の中、一本道(木道)の登山道となっている。たおやかな稜線を何も考えずに歩いていると、本当に素晴らしい風景に心が満たされ、午前10時37分に中門岳に着く。ここまで来ると、人も少なくのんびりと木道を周遊して眺望を楽しむことに。最終周回地点の木道には、多くの登山者が休息中。まだ、昼食には早いため駒山頂直下北側まで戻ることに。午前11時24分に駒山頂直下北側で、民宿で作ってもらったおにぎりとインスタント豚汁で、風景を満喫しながらの大休止となる。これで、今年も念願のキラキラした草紅葉を見ることが出来た。午後12時10分に、大休止を終え、紅葉を楽しみながらの下山、そして午後2時、無事にスタート地点に到着する。 
【行動時間6時間40分(休憩を含む)積算距離17.0km】




※新協地水(株) 代表取締役

 


[前ページへ] [次ページへ]