インドネシア ――――
     ジャワ島東部・バリ島の火山
代表取締役 谷藤 允彦


(*)まえがき
(1)火山列島インドネシア
(2)飛行機から見た火山
(3)東北日本と良く似た島弧-海溝系に生じた火山
 


 新協建設工業(株)創立25周年記念全社合同旅行に同行して、10月10日から14日まで3泊5日のバリ島旅行を楽しむことが出来ました。
 現地2日目の10月12日はフリータイムで各自思い思いのオプショナルツアーをたのしみました。私は星野会長(新協建設社長)を始め10人の社員と一緒に、ボルブドール仏教遺跡を見学するために、バリ島のデンパサール空港から中部ジャワにあるジョグジャカルタ空港までジェット機に乗りましたが、上空からバリ島及びジャワ島東部の火山を幾つか眺めることが出来ました。

 


(1)火山列島インドネシア

 あまり知られてはいませんが、インドネシアは世界でもっとも火山活動の盛んな地域であって、中でもジャワ島やバリ島は、島全体が火山活動によって形成されたと言っても良いほどです。特に現在活動中の新しい火山が多く、歴史に残る大きな被害を出したものも数多くあります。下表に有史以来の大被害火山噴火ベスト20を示しますが、何とそのうち60%に当たる12件がインドネシアで発生していることが解ります。

No.火山名所在地 噴火年死者備考
1タンボラインドネシアスンパワ181592,000噴火後の餓死を含む。
2クラカトアスンダ188336,000津波
3ブレーWインド諸島 190228,000熱雲で一市全滅。
4ベスビアスイタリア 163118,000AD79以来の大噴火
5エトナ 116915,000 
6雲仙岳日本 179215,000火山噴火の総合版
7クルーインドネシアジャワ158610,000火山泥流
8エトナイタリア 166910,000 
9ラキアイランド 178310,000 
10ムラピインドネシアジャワ1006数千熱雲
11クルート19195,000火山泥流
12ガルガン18224,000火山泥流
13アウサンギヘ島17113,200火山泥流
14ラミントンパプア 19513,000爆発・熱雲
15ムラピインドネシアジャワ16723,000熱雲・火山泥流
16パパンダヤン17723,000爆発
17アウサンギヘ島18562,800火山泥流
18アグンバリ19632,000熱雲・火山泥流
19スーフリエールWインド諸島サンバンサン19021,600熱雲
20アウインドネシアサンギヘ島18921,500火山泥流・熱雲

 


(2)飛行機から見た火山

 
写真-1 クレーター

写真-2 1973年に大爆発を
 起こしたラウル

写真-3 ラモンガン火山

写真-4 ムラピ山・ムルバブ山

(写真1〜4撮影 谷藤 允彦)
 バリ島では、富士山型の美しい円錐形のアグン山(AGUNG−3142m)、箱根火山型のバトゥール山(BATUR−1717m)・アバン山(ABANG−2152m)、多くの湖沼を伴う高原状のやや古い火山と思われるバトゥカン山(BATUKAN−2276m)等が眺められました。バリ島は面積が5000平方kmあまりで、福島県の会津地方とほぼ同じ大きさでありますが、その大部分が火山噴出物と珊瑚礁で構成されています。
 ジャワ島は、西北西<=>東南東に伸びる長さ1,000kmあまり、最大幅200km程度の細長い島(日本の本州よりやや小さい)であり、背骨のように、中央部に3000mクラスの火山が連なっています。ジャワ島は、ジャカルタ・バンドン等のある西部、ジョグジャカルタを中心とする中部、スラバヤを中心とする東部に分けられていますが、今回飛行機から眺めることの出来たのは、東部ジャワと中部ジャワの一部だけでした。

 東部ジャワに入って最初に飛び込んできたのは、直下に見える見事なクレーターです(写真-1)。
 クレーターの直径は数kmありそうで、その中央に活動中の火口があり、薄い噴煙が観測できました。火山の名前は不確かですがメラピー(2800m)かも知れません。
 そのすぐ左手には、2つの連続した火山体からなるラウン火山と思われる高山がみられ、低い方の山体の火口は乳灰色の熱泥水で満たされ、真っ白い噴煙を上げていました。
 さらに左手前方には、山頂部に白い火山灰を被った、きれいな円錐型(富士山とそっくりな)の火山を背景に大きなカルデラ火山が見られました。カルデラには中央火口丘と幾つかの噴火口があり、外輪山に当たるところでは数箇所から噴煙の上がるのが見られました。円錐形の火山はジャワ島最高峰のスメルー山(SEMERU−3676m)、手前のカルデラはブロモ山(BROMO)と思われ、スメルー山はインドネシア語で神の住むところ"という意味があり、富士山と箱根山の組み合わせに良く似ており、神々しい美しさでありました(写真-3)。

 ジョグジャカルタに近づくと右側に黒っぽい山体の上に白い火口丘が重なったような、強烈なコントラストを示す美しい火山が見られました。この山が仏教遺跡ボルブドゥールやヒンドゥー教遺跡プランバナンで神の山として信仰の対象になったムラピ山(MERAPI-2925m)であり、その右側のやや高い山は、古い火山と思われますムルバブ山(MERBABU-3150m)です(写真-4)。

 


(3)東北日本と良く似た島弧 − 海溝系に生じた火山

 バリ島やジャワ島の火山活動がどのようにして発生するのかについてはプレートテクトーニクスの立場から合理的に説明されています。
東北日本では、太平洋プレートと北米プレートの境界に太平洋プレートの沈み込みを示す日本海溝があり、その大陸側には弧状列島が形成され、列島の中央部には何列かの火山列が形成されています。
 インドネシアにおいては、オーストラリアプレートとユーラシアプレートの境界にオーストラリアプレートの沈み込みを示すスンダ(ジャワ)海溝が形成され、ユーラシア大陸側に島弧列島が形成され、活発な火山活動が行われています。
 第二次世界大戦における日本の侵略を受けたにもかかわらず、インドネシア人は親日的であるといわれていますが、その背景には、地球的な地質環境(火山や地震列島)が良く似ていることがあるのかも知れない、と感じました。 
(以上)


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