Q.小野 はじめに、比抵抗二次元探査の特徴を簡単に説明してください。
A.大坪主任 比抵抗二次元探査は、今まで実施されていた垂直探査と比較した場合、測線の長さに対して測定可能な深度が比較的深くなるという点が挙げられます。
たとえば垂直探査では(下図参照)、
…という具合に、探査深度の3倍の測線長が必要となるのですが、我社でおこなっている比抵抗二次元探査は「二極法」という方法で探査を行うため、見かけの測線長は垂直探査よりも短くなります。
ただし二極法は、測線上の電極に対応する「遠電極」を必要とするため、この遠電極も含めれば測線長は垂直探査よりも長いものになりますが…。とはいえ、遠電極を置く方法は一度設定してしまえば移動の必要がないため、電極の切り替えを機械で制御する比抵抗二次元探査には適しています。
また、解析に際していわゆるパソコンではなく、EWS(エンジニアリングワークステーション)というコンピューターを用います。これは測定された見かけ比抵抗値から、二次元の比抵抗分布を解析するために膨大な量の計算を実施する必要があるためです。でも最近のパソコンの高性能化は目を見張るものがありますから、そのうちに一般のパソコンで解析することができるようになると思いますよ。
Q.小野 次に比抵抗二次元探査の長所と短所、また先ほど少し説明がありましたが、垂直電気探査との違いをもうちょっと詳しく教えてください。
A.大坪主任 比抵抗二次元探査の長所は、なんといっても地下の比抵抗分布が、かなり的確な二次元の断面図として得られるということでしょう。
今までの垂直電気探査は、探査を行った地点直下のいわゆる点のデータを解析することによって、その地点の地質構造を推定することになるわけです。
でもこれは、あくまでも点の情報にすぎません。同様のことは調査ボーリングでも言えることなのですが、地層構成が地形などから推定しにくい、または急激に地層が変化しているような場所で、限られた数の垂直電気探査、または調査ボーリング結果から作成された地質断面図は、往々にして実際とあっていないことがあって、問題が生じることがありました。
つまり垂直電気探査や調査ボーリングは平面的にみて点(一次元)の情報ですよね。たまたま、ある位置で特異なデータを拾ってきたような場合に、これらの結果を並べて推定断面図(二次元)を作ろうとすると、この特異なデータの影響が出てしまい、誤差を生じやすくなるわけです。その他、測定地点と測定地点の間に予想できない『何か』が存在している場合もあり得ます。
そうなった場合、どうすれば正確な断面を得ることができるか?ということが問われると思います。実際に掘ってみて撮影なりスケッチする、というのが一番正確でしょうが現実的ではないですよね。でも比抵抗二次元探査なら、地表部に多数の電極を設置して穴を掘ったりせずに面のデータをできる限りたくさん取るということが可能です。そしてそのデータを解析すれば、地下の比抵抗分布が断面の形でむらなく判明するという寸法です。これが比抵抗二次元探査の最大の長所ではないかと思っています。
一方、短所のほうはといいますと、見掛けの比抵抗値という数値だけでは実際どんな地質から構成されているのか直接にはわかり得ないという、物理探査共通の大きな問題があります。
比抵抗二次元探査固有の実務上の問題としては、先ほどもお話ししました遠電極の設置が障害になることがあるという点です。遠電極の設置には解析の制約上、探査深度の5倍〜10倍以上の距離が必要となるのです。つまり探査深度100mとした場合、遠電極は測線の両端から片側1kmづつで合計2kmプラス実測線長分コードをのばす必要があります。
これが悩みのたねでして、土地の制約があって遠電極が設置できなかったり、遠電極がいわゆるアンテナの役目を果たして不規則な自然電流を拾って測定ができなくなったり、それに、遠電極の線が切断されて測定ができなくなる(車や除草時の切断のほか、野ねずみに食いちぎられることが結構多い)。他にもいろいろな要素が有るのですが長くなりそうなのでここまでにしておきましょう。
Q.小野 それでは最後に、これから比抵抗二次元探査は、どのように期待できると考えていますか?
A.大坪主任 我が社では、今のところ比抵抗二次元探査を、今までの電気探査より詳細な比抵抗断面が得られるということで帯水層や岩盤の亀裂帯の把握などで水源調査に使うことが多いですね。
しかし、それ以外でも もちろん比抵抗値の異なるようなものであればほとんどすべてが断面で表され区分することが可能です。ですから、以前「土と水」に掲載したように、地層の変化が激しくて単純に推定地層断面図が描けないようなところでも調査ボーリング孔同士を結ぶ断面図の作成にも使えますし、地滑り土塊の判定や比較的規模の大きい破砕帯の確認にも活用することが可能です。
ですから、今後も活用の可能性はいろいろあると思いますし、必要性も増していくと思います。
あと一つ重要なことをいうのを忘れていましたが、比抵抗二次元探査で得られる結果はあくまでも「比抵抗値の違いによる断面」であることから、比抵抗値に違いが見られない場合には地質や構造の違いを識別できないことを覚えていてもらいたいですね。そういった点において調査ボーリングやその他の調査方法と組み合わせることによって真価が発揮できる調査法といえるでしょう。
確かに比抵抗二次元探査は、今までの探査よりも正確で高い付加価値をもっています。しかし、まだまだ技術的な制約もありますし他の方法が正確な場合があります。万能な探査法ではないということを念頭においていただき、この方法で調査をおこなってみようとするときは、事前に必ずご相談いただきたいと思います。
小野 一日も早く比抵抗二次元探査の活躍の場が増えることを期待しています。本日は大変貴重なお話をどうもありがとうございました。
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