古くて新しい
風力ポンプと手押しポンプ
山家 久雄
※
(一級さく井技能士)
図1 風力ポンプ構造図
寄稿記事中の白河カトリック幼稚園のビオトープには弊社で井戸と「風力ポンプ」を施工しました。また、白河と須賀川の幼稚園には「手押しポンプ」を設置しました。古くて新しい機械「風力ポンプ」と「手押しポンプ」について解説をします。
風力ポンプとは
風力ポンプは風車羽根とダイヤフラムポンプからなっており、風を受けると風車羽根が回転し、その動力をポンプに伝達して水を汲み上げるといった、いたって単純な構造となっています。(図1参照)
風さえあればポンプは常時汲み上げているため電力等動力事情の悪い場所での揚水、排水、家畜の飲み水、灌漑、養魚場での給水に適しています。
古くて新しい技術
最近、風車といえば風力発電の印象が強いのですが、人間はずっと以前から風車を動力として利用していました。オランダ風車はその一例です。オランダは干拓で国土を広げていくために大きな風車を作って水を汲み上げ干拓事業を進めたのです。
アメリカ映画での西部劇には、たくさん羽根のついた風車が回っている様子が画面の隅に出てきますが、これも風力ポンプです。
電気の無かった時代では風力で水を汲み上げることは当たり前の技術でした。しかし、風車と比べれば小さく馬力もあるエンジン付ポンプや電動ポンプの登場により、風力ポンプは表舞台から消えていきました。
環境を重視する時代に入り、化石燃料の代替エネルギーとして太陽発電や風力発電が注目され、新しい風車が作られるようになりました。
効率的な風力発電のために風車は技術革新を経てより使いやすいものになっていったのです。
特徴
写真1 ダイヤフラムポンプ
大きさは大小ありますが、写真で紹介しているタイプは支柱の高さが3m、風車羽根直径1.6mの小型揚水風車です。風力発電には起動風速3m/s以上が必要ですが、この揚水風車は小型ということもあって風速2m/sもあれば回りはじめます。
仕様
Molzan
MW2000−2型
最大揚水量
16リットル/min
ローター
ブレード6枚 ステンレス製
直径1.6m
土台
四ツ脚
支柱の高さ
3m
吸い上げ深さ
7.0m
押し上げ高さ
5.0m
強風時
自動的に停止
96-98年郡山平均風速
平均風速(m/s)
1月
3.7
2月
3.9
3月
4.2
4月
3.7
5月
3.5
6月
3.0
7月
2.7
8月
2.6
9月
2.5
10月
2.8
11月
3.0
12月
3.1
総平均
3.2
資料:郡山市総務部消防
防災課中央観測所
図1の構造図でもわかるように、基礎、支柱、風車、動力伝達ギア、ポンプと部品点数も少なく簡単な構造なので、壊れにくく簡単に整備しやすい利点もあります。風力ポンプの心臓部は砂や汚れに強いダイヤフラムポンプを採用しており風力ポンプの信頼性を増しています。
参考に郡山市の月別平均風速をみると市街地ということもあり強い風は吹いていませんから風力発電には向いてはいませんが、風力ポンプには問題ないと思われます。
手押しポンプ
ある年代から上の方には郷愁を誘う井戸用のポンプです。手でレバーを上下させるときの音から「ガチャポンプ」ともよばれています。
現在でも市販されているものですが、昔ながらに鋳物で出来た本体やカーブしたレバーなど誰が見ても懐かしい形です。
風力ポンプ同様、手押しポンプも白河・須賀川の幼稚園に設置しましたところ、珍しいせいか子供たちの人気も高く、競うようにレバーを動かし勢いよく水を出して歓声を上げていました。
都市化のなかで失われた水辺環境を復興させるビオトープの中で、人も井戸という水辺で生きる生物であり、水は人に安らぎや癒しを与えるのではないかと思わせます。
地球にやさしい機械
写真2 風力ポンプ全景
親水公園やビオトープにみられる『自然とふれあう』『自然との共生』というテーマの要素として必ず『水』が関係します。その時に、極力自然に近い状態(人工的にならないように)で、なおかつ環境付加の少ない「自然のエネルギー」で水を供給する手段として風力ポンプはうってつけではないでしょうか。
風力ポンプも手押しポンプも先達の知恵が生んだ、地球にやさしい機械なのです。
写真3 川本製手押しポンプ
※ 新協地水(株) 営業部課長
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