基礎工特集
グランドスパイク工法の開発
(株)ユアテック 送電工事センター 調査課 課長 雫石 稔
新協地水(株) 基礎開発営業部長 菅野雅浩
1.はじめに
送電線建設工事の中で、鉄塔基礎の計画・設計及び施工の時に、基礎体の圧縮耐力を確保するために「くい」を採用したことが、少なからずあるのではないでしょうか。その時に、次のようなことを感じた経験はありませんか。
- 鉄塔規模が小さいので、くい打ち費用の方が基礎本体施工費よりも高くなってしまう。
- くい打ち機を稼動させるため、仮設規模が大きくなってしまう。
- くい打ち施工場所の上空に充電線路があるため、くい打ち機の設置が出来ず、場所打ちくいを採用しなければならない。
- くいを採用するほど深くないが、あと数mで支持層に到達する場合の基礎工法をどうするか。など、基礎施工費用や施工期間、環境影響が様々に変化するため、工法の選択に迷ったことがあると思います。
2.開発の目的
当工法は、比較的小規模な送電鉄塔(154kV以下)を対象とした鉄塔基礎工事の、軟弱地盤対策に関わる諸問題を解消し、さらに適切なコスト低減を実現する工法の開発を目的とした。
3.工法の解説
グランドスパイク工法は、構造物の基礎体を支える地盤耐力を補うため、小径の鋼管パイプを使用して基礎体下面の地盤補強を行う技術である。これは、次に示す3種類の技術を合成することで、支持層の強度を基礎体下面に伝達する(図1)。
(1) 鋼管パイプの圧縮支持力の確保
- 鋼管パイプは、径190.7mm×厚さ5.3mmの中空鋼管を使用し、先端部を歯型に特殊加工する(写真1、2)。この鋼管パイプをバックホウ(0.45m3〜0.75m3)に装着された油圧ユニット(写真3、4)の回転力により、支持層まで貫入させて圧縮支持力を確保する。この鋼管パイプの圧縮支持力は、同時に開発した簡易載荷試験により、既製のロードセル・変位計測器を使用して確認することが出来る。載荷方法は、バックホウによる押込み力で行う(写真5)。この時、載荷荷重・載荷時変位量・荷重除荷時の残留沈下量の計測を行い、その計測データから数学的な処理により支持力の評価を行う。
(2) 鋼管パイプ頭部地盤補強床の形成
 写真6
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- 地盤補強床は、鋼管頭部の押し抜きせん断強度の確保と鋼管頭部拘束状態を固定とするため、厚さ30cmの鉄筋コンクリートで形成する(写真6)。
(3) 鋼管パイプ頭部と地盤補強床の連結
 写真7
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- 鋼管パイプ頭部と地盤補強床は、籠状補強鉄筋により連結する(写真7)。
4.工法の特徴
- 専用の機械が不要で現場で使用しているバックホウで施工できるため、不整地での施工や掘削後の施工も可能とし、大規模仮設を不要にした。
- バックホウの高さが3点式くい打ち機よりも低いため、上空制限のある個所での施工を可能とした。
- 鋼管を回転埋設するので、低振動・低騒音での施工が可能となる。また、逆回転により鋼管を引抜くことも容易である。
- 土砂を固める特殊固化材等を使用しないため、環境にやさしい工法である。
- 鋼管先端を閉鎖しており、パイプが土砂を圧密させながら埋設するので、排出残土がない。
- 籠状鉄筋は、標準構造を定めて工場生産とし品質の均一化とコスト低減を図る。
- 鋼管パイプの埋設は、回転ユニット取付けなどの準備期間を入れても、鉄塔基礎1基あたり3日程度で作業を終了する。
- 工事用資材の削減、施工設備の縮小、工事工程の短縮、産業廃棄物の処理不要となることから、総合的なコスト低減が図れる。
5.おわりに
これまでの建設業界は、構造物の規模を問わず市場性の高い大規模な機械を、小規模設備に適用する、「大は小を兼ねる」の考えがあるのではないでしょうか。
当工法の骨格は、「小なるものは小なる設備」で「適正な強度」を実現するという観点にあることを付け加え、工法の解説の結びとします。
グランドスパイク工法は、(株)ユアテック・(有)住環境設計室・新協地水(株)の3社共同により開発いたしました。
詳しくは、ユアテックのホームページ(http://www.yurtec.co.jp)を御覧ください。
 グランドスパイクの商標登録証
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