第8回 技術研究発表会 技術賞

比抵抗二次元探査結果に影響を与える要因について

技術部地質環境課 韓 文根

1.はじめに
 数年前にわが社に導入された比抵抗二次元法は、現在、地下水・温泉・トンネルなどさまざまな目的の調査に応用されている。弾性波速度に比較し、地盤の比抵抗は粘土含有量、間隙率、水分飽和度、間隙水の比抵抗、温度など多くの要因に左右される。測定される比抵抗データは、上に述べた要因のほか、地形、人工構造物及び地盤の状況などの影響を受けている。適切な解析・解釈を行うために、どの要因が比抵抗データにもっとも影響しているかを推定することが重要である。本論文はこれらの要因について述べたいと思う。

2.比抵抗二次元探査法の基礎
(1)一次元探査と二次元探査
図  地下構造は一般に三次元的に変化するものであるが、一次元、二次元と考えられる場合が多い。一次元構造は地面が平坦で、地下構造が鉛直方向のみ変化する構造であり、二次元構造は地形や地下構造が測線方向と深度のみ変化し、測線に直交する方向には変化しない場合である(図−1)。
 一次元探査(垂直探査)、二次元探査はそれぞれ一次元構造、二次元構造を前提として測定、解析を行うものである。一次元探査では、地下がほぼ水平成層構造であることが事前把握されている必要があり、適応範囲が限られていた。地形が激しく変化する場合や複雑な地下構造に対して、垂直探査より比抵抗二次元探査が適用できると思う。


(2)見掛比抵抗と見掛比抵抗図
 一次元探査である二極法という電極配置では、比抵抗が以下の公式で求める。
図
 以上の式で、地面がまったく平坦で、均質等方であるという仮定のもとにおいて、計算される比抵抗は地盤の真の比抵抗という。不平坦で、不均質な実際地盤では、その値は、真の比抵抗を意味するものでなく、電極周辺の広い範囲の比抵抗の平均値と考えられる。見掛比抵抗とも呼ばれる。
図   二次元探査である比抵抗二次元探査では、短い電極展開距離で、大きな探査深度と広い探査範囲を確保できるなどの理由から、比抵抗二次元探査には、二極法電極配置が採用されている。図−2(a)の実験モデルに対して、比抵抗二次元探査を実施し、測定した見掛比抵抗値を記入してゆくと、図−2(b)のような見掛比抵抗図を描くことができる。見掛比抵抗と同じく、見掛比抵抗図は地下の比抵抗分布を反映しているが、測線側方の地下構造などの影響を受けており、実際の比抵抗分布とは一般的に大きく異なる。




(3)測線に直交する方向の地形の影響
図  測定される比抵抗データは地下構造の影響とともに地形の影響も受けている。解析上で、測定方向の地形の影響は傾斜が45°以下であれば補正できるが、測線に直交する方向の地形の影響は補正できない。図−3のように、仮に、測線を尾根沿いに設置する。そうすると、地形が凸の部分では平坦の場合に比べて媒質の体積が小さいため、電流密度が増加し、したがって、解析の比抵抗は実際より高めになる。谷底沿いに設置された測線では逆に解析の比抵抗は実際より低めになる。したがって、測線側方の地形が激しく変化する場合は、偽像が発生しやすいので、解析結果を検討する必要がある。


3.比抵抗二次元測定データに影響を及ぼす要因
 比抵抗二次元法では、地表地形及び地質構造が測線方向と深度方向のみ変化すると仮定しているため、三次元変化する実際地盤において、測定される比抵抗データは地盤を構成する鉱物、粘土含有量、間隙率、水分飽和度、間隙水の比抵抗、温度のほか、地形、人工構造物及び測線側方の地下構造の変化など多くの要因の影響を受けている。
 したがって、適切な解析・解釈を行うために、どの要因が比抵抗データにもっとも影響しているかを推定することが重要である。比抵抗だけからその決定要因を絞り込むのは困難であり、他の地質情報、とくに地質の概要がある程度把握されていることが不可欠である。ボーリング柱状図、電気検層、空中写真や地表踏査から得られる地質情報が多いほど好ましい。
 また、計画の段階において、探査対象の地形、人工構造物の有無、断層破砕帯など地質構造の走向が把握されている必要である。高圧線ような人工構造物、尾根・谷、断層破砕帯が存在する場合、測線側方の地形、地質構造が変化しない二次元仮定を満たすように、これらにできる限り直交するように測線を設置することが肝要である。

以下に調査実例を紹介したいと思う。


図 1) 地下水調査A


2)地下水調査B
対象地盤
第四紀溶岩、新第三紀の凝灰角レキ岩と泥岩

調査目的
地下水調査

地質概要
既存調査によって、本地域の基盤は第三紀層で、帯水層が溶岩流であることが判明されている。

併用調査
表流水流量調査、地表踏査、試掘調査

記  事
帯水層である溶岩流の分布を明らかにするために、比抵抗二次元探査を3測線実施した。既存調査結果に基づいて、測線2、測線7において地質構造が図−5のようになっていると推定する。測線5について、GL‐30m〜GL‐80m間の部分は比抵抗値が判明した溶岩流より低いが、第三紀泥岩類より高いことがわかった。これは、測線側方の地下構造が測定されるデータに影響を及ぼしたと考えられ、つまり、測線5が新第三紀泥岩と溶岩流の境目に位置し、溶岩流は図−5のように分布していると思われる。測線5測線長100mの所で掘削したら、GL‐35m〜‐90mの間、安山岩溶岩流が分布することが確認され、500リットル/minの水量が確認された。



4.まとめ
  1. 計画の段階において、入念に地表踏査を行い、高圧線のような人工構造物、尾根・谷、断層破砕帯にできる限り直交するように測線を設置することが肝要である。
  2. 適切な解釈を行うため、地質の概要がある程度把握されていることが重要である。ボーリング柱状図、電気検層、空中写真や地表踏査から得られる地質情報が多いほど好ましい。
  3. 比抵抗解析断面図だけでなく、柱状図、電気検層などの地質情報の検討を加えて総合的な解釈を行うべきである。

[前ページへ] [次ページへ]