代表取締役社長 佐藤
正基
(RCCM 土質及び基礎) |
栃木県と福島県の県境に大きな裾野を持ってそびえ立つ那須岳は、狭義には茶臼岳を指しますが、一般的には北から最高峰の三本槍岳、朝日岳、南月山、黒尾谷岳を加えた5山を総称した名称です。他に白笹山、剣が峰、赤面山、旭岳、甲子岳、流石山・大倉山・三倉山などを連ねた大きな連峰を形成しています。登山ルートも様々あり、春夏秋冬四季別の変化を楽しみながら一年を通して登ることが出来る山として親しまれています。私自身、朝日岳〜三本槍岳,牛ヶ首〜南月山そして大峠から三倉山と年に4〜5回程度は様々なルートから那須連峰を訪れ、雄大な那須岳の景色を満喫しています。そんな山行から、今回は初冬の「中の大倉尾根」ルートを紹介します。
以前、山の専門誌『冬号』の表紙を飾った、うっすらと雪をまとった秀麗な山容の旭岳がこの時期になると思い出されます。旭岳の美しい姿は、那須側からはもちろん白河市街そして会津田島から眺めるたびに、登山意欲が掻き立てられます。那須連邦の山々は、ほとんどを登っていますが登山道のない旭岳だけは未踏。「いつしか登ってみたいけど、この時期に秀麗な姿を間近で望みたい。」といった想いでこの山行を計画しました。
2004年12月19日(日)、目覚まし時計を5時にセットしていたものの、連日の飲み会がたたり全く起きることが出来ない。窓から差し込む明るい日差しに飛び起きて、あわててスタート。そして那須北温泉へ。
空は雲ひとつない青空だけど、放射冷却現象で今シーズン一番の寒さとか。雪をまとった那須連峰が朝日を受け光り輝いており、運転中もはやる気持ちを抑えることができない。那須ボルケーノハイウェイの料金所を過ぎてすぐに右折、ところどころ凍結し今シーズン初めての雪道となる。観光シーズンなら常に満車状態の駐車場も、今はすいている。
本日の山行は、標高1,140m程度の駐車場から1,870mのピークを第一目標に、体力的に余裕があれば1,917mの三本槍岳を目指す予定。
駐車場から標高差にして約50m下り、温泉北側の敷地を通って沢を渡れば「中の大倉尾根」への登り口となる。登山口から尾根への取り付きは急登の連続。冷え切った体を温めるように、一歩一歩高度を稼ぐ。約25分でマウントジーンズスキー場との分岐となり、ここに設置してあるベンチにて小休止。看板には、「熊に注意」の文字が。今年(平成16年)は、全国各地で熊が出没し社会問題にまでなっていた。これは熊が餌を求めて人間の生活圏に侵入していることが原因らしい。今日は、我々が熊の生活圏に侵入していることを改めて認識し、もう寝ているはずの熊を起さないよう軽快(警戒?)
に登る事とする。
分岐からは緩やかな登りで、木々の間からうっすら雪をまとった茶臼岳が悠然と姿を見せる。ハイマツの混じる笹原の道は雪に覆われ踏み跡はまったくないものの、地形と植生の状況から登山道はまだまだはっきりしている。視界も開け気分も最高潮のとき、登山道脇に連続してある動物の足跡に気づく。この足跡は、今まで見てきた足跡より大きく明らかにツキノワグマのものである。
「今年は、冬眠に耐えられるだけの餌が十分に得られず、まだ活動しているのだなあー」と同情しながら、大声で歌い先を急ぐことに。
平坦から道は少しずつ傾斜が増し、スダレ山の斜面に取り付くとさらに傾斜がキツクなる。南側を眺めれば朝日岳そして赤面山分岐からピーク1,868mへ。ピーク直下からは冬の寒風が吹荒れ、登山開始2時間43分でピーク1,868mの大岩にようやく辿り着く。北側を見れば、本日の山行の大きな目的であった三角錐をなす秀峰旭岳を見渡すことが出来る。(表紙参照)本来であればここを通過点として、清水平〜三本槍岳へ進む予定であったが、冬山シーズンは始まったばかり、まだ体が寒さに耐え切れない。無理をして家族そして会社に迷惑をかけるわけにもいかず、本日はここを最終目的地とする。
それにしても、天を突くような旭岳の姿は美しい。間近で観る迫力にうっとりしながら、熱いコーヒーで体を温める。しかし、この大岩付近では、寒くて食事を取ることも休むこともままならず、15分少々で下山をすることに。下山は、寒さを克服するためただひたすら走る走る。おかげで熊に対する恐怖心を感じず駐車場まで一直線。
(片道5.8km 登り2時間43分,下り1時間37分)