1.まえがき
エアーリフトポンプは、1797年、ドイツの鉱山技師によって考案され、米国人のJ.P.Frigellによって具体化された揚水方法であるといわれている。奇しくも今年は考案されてからちょうど200周年となる。
200年の古い歴史をもつエアーリフトポンプであるが、この設計理論は、極めて未解明なところが多い。例えば、エアーリフトの揚水公式として、一般に知られている式は、次式のようなものである。
・・・式(1)
ここに、
この式における揚水量は、低下水位と地層の透水係数とが関与するので、浸水深さhsが一次的に決めることができない。
この弱点を克服した新しい設計理論を提案し実務に役立てることを目的に、この小文をまとめたものである。
2.エアーリフトポンプの原理
エアーリフトポンプは、揚水管と送気管から成る極めて簡単な構造であり、そのため、故障が少ないという利点をもっている。
図-1に示すように、揚水管の先端部に送気管を取りつけ、空気を流出させると、図-1のA点より上の揚水管内の水が空気と混合し、比重が軽くなる。A点では浸水深さに相当する地下水圧が加わっているので、この水圧によって、比重が軽くなった揚水管内の水が上に押し上げられる。これが継続的に繰り返されることによって、地下水が揚水される。エアーリフトポンプは以上のような原理によって稼働する。
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3.空気/水混合容積比と揚程係数
はじめに、図-1の記号を説明する。
エアーリフトポンプの原理によると、次の式が成り立つ。
・・・式(2)
ここに、
式(2)における は、空気の重さをゼロとすれば、揚水管内に流れる水の流量Qwと空気の流量Qaによって、次式で表される。
・・・式(3)
式(3)において、空気/水混合容積比nを
・・・式(4)
と定義すれば、次式で変換することができる。
・・・式(5)
式(5)を式(2)に代入すると
となり、これから空気/水混合容積比nを求める。
・・・式(6)
h+s/Hをパラメータにして、空気/水混合容積比nを計算すると、図-2の関係が得られる。ここでパラメータを揚程係数Zと呼称し、次式で示す。
・・・式(7)
但し、式中のHは摩擦や流速による損失影響を考慮していない。
4.揚水量と揚程H
エアーリフトポンプによる目標揚水量
(m3/min)は、井戸公式により次式で算定される。
・・・式(8)
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ここに、
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式(8)の中の低下水位Sが決まり、揚水管の排水口から自然水位までの深さhは既知であるので、揚程係数Zを決めると、揚程Hが求まる。
・・・式(9)
揚程係数Zは、空気/水混合容積比nで決まる値であるので、式(8)で算定される、または目標とする揚水量 に対して、どれくらいの空気量Qaが送り込めるか、コンプレッサーの能力によって設計される。
揚水量Qw、低下水位S、空気/水混合容積比n、揚程係数Z、揚程Hのそれぞれの相互関係を理論的に求めたが、この理論がエアーリフトポンプの新たに提案する設計方法の基礎である。
5.あとがき
ここに提案した設計理論は地盤の透水係数の要素も取り込んだものであり、単にポンプとしての機能設計にとどまらない。その意味では地盤の特性と適正な送気量によって設計できる包括的な方法であると考える。
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(’97.9.24)
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