福島県の湧水シリーズ(その3)
郡山市水道発祥の地“清水池”
水源開発課  五月女玲子

写真  こんこんと池の底より清冽な水が湧き出ている清水池は、郡山市水道発祥(多田野水道)の地で、JR「郡山駅」より、西南西方向約9.5km地点の大槻扇状地内に位置しています。郡山では、多田野水道ができる前の江戸時代、皿沼水道と山水道などといった水源が使われていたそうです。皿沼水道は、現在の商工会館の場所にあったそうで、水源は、西ノ内段丘崖から湧出する湧水(推定)と、西方6km程離れた大槻方面からの余り水でした。旱魃時には水が不足したり、農繁期には汚濁することがあったりで、水質は悪かったといわれています。

水道発祥の地 他方、山水道は、西部の台地(西ノ内段丘)のあちこちから湧出していた湧水に集水井戸を掘って、地下水を利用したものです。この山水道の水源地は、清水坂(現:清水台)・上台(現:清水台)・虎丸・赤木などがありました。これら、西ノ内層下部の砂礫層を帯水層とした地下水は、一般に水質が良好で、現在も一部で利用されています。しかし、ビルの建設などで、地下水が枯渇したり、水質が悪くなって消失した井戸も多数あります。明治期にはいると、郡山の人口が増えて、皿沼水道と山水道を合わせても、増加する水需要に追いつけなくなってきました。

銅像  そこで清水池の湧水を水源として、木管をつなぎ合わせ、延長約10kmにも及ぶ多田野水道が造られたということです。これにより、約6千人への給水が実現し、良質な生糸も生産できるようになったりと、清水池の湧水は郡山の発展に寄与しました。

図  その一方、木管のメンテナンスは大変で、木の腐蝕や漏水が多かったということです。その後、明治45年に有名な安積疎水(猪苗代湖から安積原野への灌漑水)を水源とする上水道が完成し、その陰で多田野水道はひっそりと、上水道としての役割を終えました。現在、清水池の湧水は生活用水、農業用水等に利用され、安積疎水に合流しています。

図  池の底をよくみると藻の茂っているところと砂のところがあります。砂だけのところをよく見ると湧水の勢いで砂が動いているのがわかります。この周辺の地形を見回すと、郡山・湖南線の道路沿いは、東西に少し高まりがみられるのに比べ、清水池の周辺は、それに平行して帯状に少し低くなっています。かつてこの付近を、多田野川かあるいは、逢瀬川が流れていたのかもしれません。

公園  清水池湧水のある場所は、公園になっていて地元の人たちによって花が植えられたりと、きれいに整備されています。水は冷たく、水量も700平方m/日と豊富で、これから日ざしが強くなってくる季節には、ちょうどよい休憩地になることでしょう。ただし、この湧水は測定した時点で、水質的に問題がなかったのですが、時折、汚れることがあるらしく、飲むことはできないということなのでくれぐれも注意してください。この公園からすぐ近くの南方約500mには、県指定天然記念物になっている奇岩の有名な浄土松公園があります。この奇岩は、新第三紀中新世の白石層に属する、かつての海に堆積した白色凝灰岩が浸食にさらされてできたものです。浄土松公園は一周30分ぐらいのコースで、みごとな松と奇岩景勝が楽しめます。清水池とあわせて探訪されるのも一興でしょう。初夏の日ざしの中、お弁当をもって出かけてみませんか。

 交通 JR郡山駅より、バス「御霊櫃」あるいは、「休石」行きに乗り、「大界」または、「白石」バス停下車、徒歩5分。車で行く場合は、県道郡山・湖南線を三森峠方面へ行き、「少年自然の家入口」からさらに三森峠側へ650m先に行ったところに看板「郡山水道発祥の地 清水池公園」とでているところを左折し、100m左方。


参考文献
 郡山市(昭和49年):郡山の歴史
 郡山市環境衛生部環境保全課(平成9年):市民が選ぶ水とふれあう名所10選
 農業用地下水研究グループ「日本の地下水」 編集委員会(昭和61年):日本の地下水
 経済企画庁総合開発局(昭和43年):土地分類基本調査「郡山」
 新協地水(昭和59年):「土と水」第2号
     (平成2年):「土と水」第4号、浄土松公園「キノコ岩」
     (平成4年):「土と水」第10号、郡山盆地の成立ちについて−その2−

清水池の水質試験結果(自社測定)
採水時の天気  晴れ 水 温  13.4℃
試験項目 測定機器 測定値 上水基準値
亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素 F.S. 0.343mg/リットル 10mg/リットル以下
塩素イオン F.S. 08.002mg/リットル 200mg/リットル以下
PH値 PH計 06.70 5.8〜8.6
色度 DR 03ユニット 5度以下
濁度 DR 02FTU 2度以下
全鉄 DR 00.100mg/リットル 0.3mg/リットル以下
総硬度 DR 000.14mg/リットル 300mg/リットル以下
全マンガン DR 00.001mg/リットル 0.05mg/リットル以下
アンモニア性窒素 F.S. 00.095mg/リットル
フッ素イオン DR 検出されない 0.8mg/リットル以下
試験実施日:平成9年6月30日(月)〜7月11日(金)


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