水の話あれこれ福島県の湖と川(その7)
代表取締役  谷 藤 允 彦

 福島県の面積は、13,781.51km2で、北海道・岩手県に次いで全国3番目の広さを有している。日本全体に対して、面積では3.65%を占めるが、人口では1.70%を占めるに過ぎない。このため、人口密度は全国平均が1km2当り約330人であるのに対し153人と、半分以下となっている。この内、森林面積は71%にあたる約9800km2であり、全国4番目の広さを誇っている。
 広い県土・少ない人口密度・大きな森林面積が、自然がいっぱいという福島県の環境を支えている。
 広い土地と豊かな森林に恵まれた福島県は、豊かな水にも恵まれていることが容易に想像できる。
 美しい水辺の代表は湖といって良いであろう。福島県には猪苗代湖を始め、多くの自然湖沼があり、県土面積の約1%を占めている。これらの湖沼の大部分は標高の高い位置にあり、澄んだ水質と美しい景観に囲まれ、自然公園になっている。
湖沼名 面積(平方km) 周囲(平方km) 水面標高(m) 最大深度(m)
猪苗代湖 103.32 55.32 514 93.5
桧原湖 10.72 32.00 822 30.5
松川浦 5.90 25.00 0 5.5
秋元湖 3.64 12.50 736 34.1
沼沢湖 3.00 7.55 474 96.0
小野川湖 1.67 8.30 797 20.0
尾瀬沼 1.80 3.27 1662 9.5
雄国沼 0.52 4.60 1090  

 自然湖沼の他に、水力発電や灌漑用水のために多くの人造湖(ダム)が作られているのも福島県の特徴の一つである。ダムの中には日本有数の規模を誇るものも有り、この事も自然と水に恵まれた福島県を象徴するものである。
ダム名称 人造湖名称 堤高(m) 有効貯水量(億立方m) 湛水面積(平方km) 建設主体 目的
奥只見 銀山湖 185.0 4.580   電源開発 発電
田子倉 田子倉湖 145.0 3.700 9.952 電源開発 発電
三春 桜湖 70.0 0.360 2.900 建設省 多目的
大川 若郷湖 78.0 0.445 1.900 建設省 多目的
摺上川   111.5 1.480 4.600 建設省 多目的
千五沢 母畑湖 43.0 0.130   農林省 農業用水
羽鳥 羽鳥湖 37.1 0.260 1.750 農林省 農業用水
真野   69.0 0.348 0.690 福島県 多目的
日中   101.0 0.231   福島県 多目的

 森と湖の国、福島県は、当然の事ながら多くの河川が流れている。
 川といえばまず思い浮かべるのは阿武隈川であろう。阿武隈川は栃木県境の三本槍岳の北東山麓に発し、東流する白河市において、北に向きを変えて中通を縦貫して宮城県に入り、仙台平野南方で太平洋に注ぐ。流路の延長は239km、この内、福島県内の1級河川指定区間の延長は180.655kmとなっている。阿武隈川の流域面積(降雨がその川に流れ込む範囲)は全体で5400km2、福島県分は4079.7km2である。
 福島県内には、国が管理する重要河川(1級河川)が阿武隈川水系の他に3つの水系があり、1級河川の流域面積は県土の76%をしめている。福島県が管理する2級河川は、浜通り地方にのみ分布し、36の水系と数は多いが流域面積は24%を占めるに過ぎない。
 福島県の中通りや会津地方は、国が管理する重要河川(阿武隈川・阿賀野川・久慈川・那珂川)の上流部に当たっている。これら日本を代表する大河が、しぶきのはねる源流部からとうとうと流れる中流部までが福島県内を流れており、汚れの少ない清流が多いという点でも福島県は川の恩恵を受けている。
河川区分 水系 河 川 数
(平成10年6月現在)
水系流域
面積(km2)
面積比率 備考
1級河川(建設省管理) 阿武隈川水系 153 4079.7 28.61%  
阿賀野川水系 161 6051.9 42.43%  
久慈川水系 20 512.5 3.59%  
那珂川水系 1 189.5 1.33% 黒川
1級河川計 4水系 335 10833.6 75.96%  
2級河川(福島県管理) 夏井川水系 27 748.6 5.25%  
鮫川水系 23 600.9 4.21%  
請戸川水系 8 428.2 3.00%  
木戸川水系 10 313.3 2.20%  
その他32水系 92 1337.0 9.37%  
2級河川計 36水系 160 3428.0 24.04%  
合計 40水系 495 14261.6    

水系流域面積
写真 写真

 意外に感じられる方がおられるかも知れないが、福島県の河川の中では、阿賀野川水系の占める割合が、阿武隈川水系の占める割合に比べてはるかに大きい。阿武隈川水系には大きな支流が無いのに対し、阿賀野川水系には只見川や伊南川・日橋川(猪苗代湖)などの大きな支流があることによる。同時に、会津地方の広さ(茨城県の全面積にほぼ等しく、東京都と神奈川県を合わせた面積の約1.4倍も広い)を物語るものである。ちなみに会津地方の人口は約37万人に過ぎないのに、東京都と神奈川県を合わせた人口は約2000万人である。
 首都圏の都県に比べると、福島県がいかに水に恵まれているか、特に会津地方の水の豊かさが浮かびあがってくる。この貴重で豊富な水資源は21世紀へ贈る大きな県民財産と言うべきである。福島県が21世紀に日本の中心としての役割を担う可能性があるとすれば、豊富できれいな水資源の保護と活用如何にかかっているといっても過言ではない。

参考資料
 福島県企画調整部統計調査課:「福島県勢要覧」
 福島県土木部河川課:「河川調書」
 福島県建設技術協会:「福島県土木史」


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