【環境特集1】広がる地質汚染「地下空気汚染」
研究開発室  澤 内 知 子

1. 環境問題について一言
 最近、ますます話題にされることの多い「環境問題」。「地球温暖化」や「酸性雨問題」、「野生生物種の減少」など、一度は耳にしたことがあると思います。これらの問題に対して、「地球」という連続した共有社会を認識し、問題を解決して行こうとする動きが、世界各国で起こっています。1992年に、ブラジルのリオデジャネイロで開催された「環境と開発に関する国連会議(UNCED)」、通称「地球サミット」では、首脳レベルで環境問題について討論し、「アジェンダ21」のような具体的な行動計画が採択されています。また、1997年の「地球温暖化防止京都会議」では、温室効果ガスの削減率が決まるなど、より具体的な対策が進み出しています。
 「環境問題」は、決して他人事ではありません。車に乗ったり、洗剤を使ったり、ゴミを燃やしたり、そういう身近な生活の中に環境汚染の原因があり、その延長上に地球規模での環境破壊があると考えます。

2. 地質汚染とは?
 前段落で、「身近な生活の中に環境汚染の原因がある」と述べました。では、私達の足元にある地面、このもっと下にある地下はどうでしょうか。
 「大気汚染」や「酸性雨」など、地面はこれらの汚染を一身に受けています。そして、汚染物質は地下へと浸透します。しかし、もっとはっきりとした人為的汚染として注目を浴びている例が、多種のハイテク工場などからの汚染物質の漏洩、拡散です。汚染物質としては、洗浄用や化学製品の原料、または溶媒としても利用されている、PCE(テトラクロロエチレン)、TCE(トリクロロエチレン)などの有機溶剤が挙げられます。これらの人体への影響は、頭痛、めまい、吐き気など、その物質・濃度によって異なりますが、発癌性が指摘されているものもあります。
 他にも、ゴミ処理場からの汚染物質の溶出など、地下という見えにくい場所でも、汚染は起きているのです。

3. 地下空気汚染とは?
 さて「地下空気汚染」についてご存知でしょうか。もちろん、言葉の示す通りです。地下の土の構造は、「土・水・空気」に分けられます。
 汚染物質は「水」によって運ばれ、広がることが多いのですが、特に揮発性の汚染物質であった場合、地層間隙・地下空洞の空気を汚染します。先ほど例として挙げた、PCE、TCEは、代表的な揮発性有機塩素系化合物です。これらによる地下空気汚染は、地上へ出てくることで人体へも影響しますし、いずれは大気汚染をひきおこします。

4. 地下空気汚染の調査方法
 揮発性汚染物質による地下空気汚染の調査には、「君津式表層汚染調査法」が一般的に用いられます。これは地表面近くのごく表層の汚染状態を調べる方法で、汚染源の特定やその分布域を明らかにすることができます。
 調査地に、たとえば4〜8m程度の粗いメッシュをかけ、各交点での汚染物質の濃度を測定します。汚染物質の反応が出たエリアは、さらに0.5〜2m程度まで間隔を狭めて測定します。濃度測定には「検知管※」を使い、その場で値を出します。手順を以下に示します。

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※ 検知管:対象気体に反応して変色する検知剤が、ガラス管に充填してあります。これに一定量の試料気体を吸引させ、検知剤の変色の量で濃度を読み取ります。
 (1)地表面にボーリングバーで、深さ0.85mの調査孔を開ける。(2)ガス採取器、アダプター、検知管をセットする。(3)セットした検知管を孔底まで差込み、フランジで地表面を塞ぐ。(4)孔内のガスを採取し、対象ガスの濃度を測定する。
 それらの測定結果から右図のように、表層での汚染状況が判明します(イメージ図)。色の濃いところから汚染が広がっている様子です。

5. おわりに
 これまでに述べてきたことは、あくまでも表層における2次元エリアでの汚染分布の調査です。「地下」という、深さを持った3次元エリアを把握するには、さらに詳細な調査を要します。しかし、このような簡易な調査からも、汚染源の解明や以後の対策の足がかりとなるデータを得ることができます。

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