第二輯(1932):山口、安蔵の独創的な研究
東京帝国大学教授山口昇が、論文「土の剪断抵抗力の測定」を書いている。測定装置は、いわば「直接二面剪断試験機」であって、第一輯に土の剪断抵抗力を測定する装置として取り上げられている我が国における独特の装置である。これから4年後に開催される第一回土質基礎工学国際会議(1936:ハーバード)にこの論文が発表される。
九州帝国大学助教授安蔵善之輔が、応用関数を用いてCoulomb,Rankine,Boussinesqの土圧式を独自に誘導し、砂の土圧解法を提案している。
この報告書で注目されるのは、海外の文献紹介で、Hogentoglerらの論文での土質力学を路盤土に適用されている先進的な内容、戦後日本でも取り入れられた土質試験方法 (物理試験)、W.S.Housel(1929)による載荷試験方法とその結果による基礎の沈下量の予測方法などは、我が国の地盤工学の発展に大きく貢献したものばかりである。
海外文献の紹介でもう一つ、G.Gilboy(1931)の論文「土質力学の研究方法」が注目される。Terzaghiが土質力学の研究をどのような姿勢(理念)で取り組んでいたか、その様子がうかがえる。「Terzaghiは1925年Massachusetts Institute of Technologyの所員となって多くの学者がその指導のもとで土質力学を研究し、大きく発展の道を開いた。研究分野は、大別して1)土質物理学と2)土質力学に分けられている。」・・「土質物理学に関する完全な知識を持つと云うことは人生科学的見地からしても興味あり、且つ価値のあることである。併し、現場技術者に取って常に難しい問題となる事柄に対して何らかの解決案を与えない限り、それは経済的に見て全然価値のないものである。これがDr.Terzaghiの所信で、彼並びにその一派は常に此の真理の下に実験に当たっている。」